中学生の時は、県模試でも偏差値70を超えていた息子だが


県立のトップ高校に入学したものの、


各公立中学校のトップの成績を誇る生徒ばかりの集団の中で完全に埋もれていた。



入学前の春休みの宿題から勉強に身が入っていない息子に対し


「やらないと遅れてしまう」とか

「テスト勉強はやっているのか」とか


私は余計な言葉をかけ続けていた。



【勉強が出来ない自分】

【親の期待に応えられない自分】


そんな自分に嫌気が差してしまったのだろうか。


息子は


自分の腕の外側に傷を付けていた。



「どうしてこんな事したの?!」

私は息子を激しく問い詰めた。


大事な身体に傷がついている事に激しく動揺していた。



息子は

「勉強していると眠くなる。」

「痛みがあれば、目が覚めて勉強に集中できるから。」

と、言った。



その時、当時の私はどうしたらいいのか

頭が真っ白になり、何もかも分からなくなっていた。



高校の授業進度は早く、高校1年の二学期には高校2年生の範囲に入る。

とにかく東大を目指せ、と言われ

クラスメイト達は猛烈に勉強している。



そこから、

その乗ってしまった大きな船から

たった一人降りてしまうのが、怖かった。


近くに港もない大海原のど真ん中に

たった一人飛び込む勇気など無かった。



その時、本当なら息子を守るために私は行動を起こさなければいけなかったのに。


大海原のど真ん中に何の装備も無くても、息子を守るために、飛び込めば良かったのに。




出来なかった。




私は何を恐れていたのか


私にとって一番大切なのは息子の笑顔だったのに



守れなかった。




きっと息子は

こんな弱腰な臆病な、世間体ばかりを気にする母親に


心底ガッガリし、失望しただろう。





息子の存在価値とは


勉強の出来不出来では無い。



息子の持つ、本来の優しさや笑顔だ。



それだけで充分なのに、

一番大切な事を見失っていた。