高校では年に一度、三者面談が行われていた。



まだ高校一年生だったが、もう大学入試の話があって驚いた。


「どこの大学を目指しますか?」


と質問する先生は既に答えを持っている様な素振りで


「東大を目指します」


と言わなければいけない様な雰囲気だった。



高校の先生方は、

各生徒達の入学時の得点や

高校受験した全ての高校やその合否

持っている資格など


全てを把握していた。


そして当然、現在地である今の成績も。



息子は、雰囲気に飲まれ

先生が望む答えを、

いや、息子の隣に座っている母親である私が望む答えを口にした。



「自分で言ったからには、頑張れよ」

と、先生は息子に話し


隣で聞いていた私も、息子の答えに安堵していた。



実力なんて二の次で。


聞きたい答えを聞いて、勝手に安堵していた。




そして一瞬で現実に引き戻された。


「赤札を取らないようにしなさいね。」

という先生の言葉によって。



そうだ。

やはり勉強していないのだ。



県立高校から子の成績表を送ってくる事はない。


息子が受け取った成績表は、息子が私に見せなければ

私は、息子の成績を知る術は無い。



赤札・・・



赤点だらけなのだろうか・・・



私がガッカリする姿や表情を

息子は見たく無かったのだろう。




息子が中学生の時、

成績表を見ては大喜びしていた私。


中3になって勉強しなくなった時は、あからさまに大慌てしていた私。


息子は、


あの時のように、死に物狂いに勉強するのは嫌だったのかもしれない。



いや恐らくそれ以上に



息子の成績に一喜一憂している母親を見たくなかったのかもしれない。


悪い成績表を見て、ガッカリしている母親を見たくなかったのだろう。



そして同時に


親の期待に応えられない自分を責めていたのだろう、と今になって思う。