「ガン免疫療法」に関して、これまでは、「異物への免疫反応を強くする」ことに執着する研究が多く、まだまだ画策の域を超えられていない状態と言えます。
ガン細胞は、「元々は異物でなく変異によってできたもの」。確かにこれでは「いくら異物への免疫反応を強化しても」…という単純な疑念は残ります。

科学的に論んじると、
免疫細胞が持つ「PD-1」という免疫の活性化を阻止するタンパク質に対して、ガン細胞は「PD-L1」という「PD-1」と結合するタンパク質を備えています。この結合によってリンパ球の活性化にブレーキがかかるわけで、これがガン細胞の免疫に対する回避能力なのです。

人間の体には不要なものは一切なく、このPD-1も免疫のコントロールという意味では必要不可欠なものです。そして驚くべきことは、ガン細胞がその機能を知っているということです。

悲観的に推測すると、ガン細胞には、もしかしたら我々人間が今後作り上げていく新薬などすべてに対抗する能力を潜在的に持ち合わせているのではということです。

現在、このPD1とPD-L1の結合を阻止する新薬はすでにニボルマブ(オプジーボ)が承認されています。              

しかし、現時点でのガン免疫薬の安全性は確立されていませんが、決して泥縄式であってはいけないのです。実際に、当薬によって免疫が活性することで、肝臓、肺、甲状腺などの臓器に大きな副作用を発現させてしまう可能性があることもわかっています。

ガン細胞は、0.5~1cmで早期発見レベルのサイズですでに10億個もの数に到達していますが、血管新生はおよそ100個から始まると言われています。そしてガン細胞1に対して免疫は100を要します。つまり、早期発見次点で、単純に考えると10億個の100倍の免疫細胞が必要かもしれません。

これが何を意味するのか?

抗原抗体比率(受容体数限度説)の原則から
「数で勝負せよ」を教えてくれています。
白血球数ではなく、その中のリンパ球数ということです。
白血球の「量より質」とはこのことです。

これが「ガン細胞と闘うにはリンパ球数(血液検査数値上)最低1800が必要」が意味するところです。ただ、抗がん剤治療を選択すると、投与後も1800に到達するための努力は並み大抵でありません。

そして、さらに悲観的にならざるを得ないのは、PD-1に関連した免疫薬が効きにくいという治験結果も出ているのです。それが、PD-1とは別の受容体が作用しているという研究報告です。ガン免疫薬の標的がPD-1/PD-L1のみならず他10数種類以上も存在するのです。私から見れば、これが何となく不気味で仕方ないのです。製薬各社はPD-1以外に作用する開発を進めていますが…

ガン細胞の潜在的能力は果てしないのでしょうか?数年後もしかしたらガン免疫薬も分子標的薬と同じ評価になってしまうのでしょうか?ガン細胞自体も対抗手段を進化させてくるのでしょう。

もしかすると、原始的療法に戻ることの大切さを教えてくれているのかもしれません。