前回、「受動的音楽療法」について記しましたが、今回は「能動的音楽療法」を取り上げてみたいと思います。

「能動的音楽療法」とは、歌を唄う、楽器を演奏することによって心身医療への応用や、ホルモン系・生理機能を正常化するということですが、その中でも私は特にピアノに注目しています。

先日、徳島在住の音楽家である冨永裕子先生宅にお邪魔し、「ピアノと認知症予防」についてお話させていただくことができました。受験シーズンになると県外からも音大受験のために先生のもとへ多くの学生が指導を仰ぎにくるほどの指導者としての信頼も絶大です。
多才な面として、ガラス工芸では東京でも個展を開かれ、これまで「テーブルウェア大賞コンテスト優秀賞」「朝日現代クラフト展入選」「川崎国際現代ガラス展入選」「国際クラフト展トリエンナーレ入選」など音楽以外でも輝かしい実績をお持ちです。


冨永裕子先生とレッスンルームにて


冨永裕子先生プロフィール
元徳島文理大学音楽学部講師
元徳島県立名西高等学校芸術科講師
文化庁派遣行事による演奏会奏者
全四国音楽コンクールピアノ部門第一位
徳島県音楽コンクール第一位
ピティナコンペティション指導者賞受賞ほか


認知症予防とピアノ

人間が他の高等動物より明らかに優れているのは脳と指です。このことからだけでも指と脳の関わりの深さは想像がつきます。手は「第二の脳」と呼ばれ、神経細胞が他の部位に比べ多いことから、この指先を動かすことで脳を活性化するわけです。指を使うことで脳細胞が刺激されることは脳科学でも実証されています。

手や指からの触感の刺激から、脳の運動野と感覚野と呼ばれる広い領域が活性化されることが証明されていることから、ピアノによる脳の活性は、鍵盤に触れるという刺激だけでも有効で、さらに鍵盤を強く押したりやさしく押したり、速さやタイミングを変える刺激が指先から手を使って脳の方に刺激となって入るのです。

さらに、ピアノによる指からの脳への刺激は、海馬やその周辺の部分を活性化することも証明されていることから、認知症予防効果や改善法としても有効であると言えます。

認知症患者は、様々な体の機能が低下していく状態を、ピアノを習い始めることで鍵盤に触れたタイミングや強弱で音のフィードバックが得られるので、それが「自分にも出来るんだ」という自信と満足感につながってくると言われています。

また、認知症の人には、同時に2つのことを考えて行動してもらう訓練が有効と言われ、例えば「調理をする」という療法があります。ピアノに限りませんが、両手を使うことも一つの訓練であり、また弾きながら声を出して唄うことも大変有効であると言えます。

ピアノは初心者ほど脳を使うことも実証されています。つまり鍵盤の位置を確認し楽譜をみながら左右の指を使う。お年寄りや初心者ほど不器用なので「考えながら」ということから脳の血流は相当活性化するということです。

冨永先生は、「大人の方は、徐々に弾けるようになることで自信がつき、特に心身共に活発だった若いころよく聴いていた音楽が耳に入ってくるとその記憶を蘇らせ活力が沸いてくるのでは」とおっしゃっていました。
先生は、これまで病気一つしたことも薬も飲んだこともないとおっしゃるほどの超健康体で、これも「音楽の力が相当貢献しているのでは」ということでした。おわり