【2日目/二次予選】
二次が始まる前に十年選手の表彰式があった。今回はライエルと謎電の作者が該当することになる。本来なら同期デビューのIS将棋の作者もそうなのだがキャンセルの結果、2人だけとなった。内容は、「世界コンピュータ将棋選手権に10回出場しコンピュータ将棋とコンピュータ将棋選手権の発展に寄与されたので表彰する」というものである。その直後ライエルが、私の表彰状に書かれてある「勝数」にツッコミを入れて来た。ライエルは、自分の方が多いと自慢したかったようである。そうか、そうくるか。ここではとても書けないグレイトな嫌みをのたまうライエル。ふ、日本語は充分有段者だな。イヤミはオランダ語にしてくれ、と言ったら「今年も勝つ」とかなんとか喋ってたようである。
さて、宿命つーかなんつーか、謎電の二次初戦はSPEARだった。全く計算機将棋の神様は粋な冗談を飛ばしてくれるものだ。いつもならギャラリゼロなのだが今回はプラチナカード化していたようである。この一局だけは何があっても負けるわけにはいかない、と気合だけは充分入っていたものの、その結果はここにはとても書けない。1回戦終了直後、いきなしエーザイのサクロン®のお世話になるとは想定外だった。なにやら異常な脱力感がそこはかとなく押し寄せてくる。対照的にライエルは、謎電の作者に殺意にも似た感情を沸きあがらせるには充分過ぎる程の満面の笑みを浮かび上がらせていたのだった。ラーイーエール~~~、本当に嬉しそうだったな、つーか笑いが止まらないみたいだったな、そん時は。
試合は進むが、実は正直よく覚えていない将棋が多い。体力の殆ど全部を使い切ってしまっているような疲労感の中、ただただ惰性でマシンを操作し時間が過ぎ去っていったような感じだった。そんな二次予選の中で全勝街道まっしぐらだったのが柿木将棋だ。Bonanzaですら3戦目(対備後将棋戦)で黒星の中、7連勝のダントツ。最先端計数将棋学の中で最も力を入れて宣伝している柿木将棋がさっさと決勝進出を確定させてくれたのは、感謝すべきありがたいことであると思っている。
と、その時であった。某少年A(左写真、特に名を秘す)が、LANの電源を落としたのである。本人はシレっとしていたので故意ではないとは思うが[*1]、先ずは最初に謝れよ、言い訳の前に。あと、カメラ向けられてわけわからん格好するのは考えものだ。大体、何の意味があるんだよ、その両手の指先に。
こーゆー男はガツンと一発指導すべきである、と思っているところに、既に二次突破が確定していた師匠曰く、「誰も対局してなくてよかったね」の助け舟で事が収まった。全く運の良い野郎だ。因みに謎電はLAN通信対局に対応してなかったので、全く関係のない事件だったのだが、この時極めて真剣に激怒していたのは、何を隠そう謎電の作者だった。
結局9戦終わって謎電は4-5の16位(総合19位)で、ぎりぎり二次シード権を獲得した。直接対決では負けたが、総合順位では勝ったので一応の面目を保ったと思う。しかしながら十年やってても鳴かず飛ばずというのは、何とも情けない限りである。
ところで今回、謎電の作者が個人的に注目していたのは、TACOSとGPSである。過去の橋本開発日記およびGPSの開発主要メンバのブログ等を読むと、簡単に言えば「Bonanzaに対して大した脅威を感じていない、あるいは互角以上で戦える」ような話になっていたのである[*2]。彼らは話を作るキャラクタではないので、実際にメチャ強いプログラムに仕上がっていたのだろうと思っていた。特にTACOSは二次でBonanzaに勝ったので決勝で期待が大きかったのは確かだ。またGPSは、過去の話とは言えYSSや激指に勝った実績を持つプログラムであるから、決勝進出、そして優勝する可能性を否定できなかった。が、しかしだ、
Bonanza相手に8割[*3]勝つプログラムが、なんでうさぴょんに負ける!?
勝負とはそういうものであることを、GPSのリーダは悟ることができたのではないかと思う。
-- 続く --
[*1] 注意を怠ったという意味では、何のケーブルであるか確認するのが面倒だった、ということだろう。
[*2] これまた全く余談だが、小宮日記内でみさきが短手数でBonanzaに勝ったという話には、正直腰が抜けるほど驚いたが棋譜を見て理由が直ぐ判った。そしたら速攻で内容が書き換わっていた(汗)
[*3] この数字は、5月4日二次予選当日にGPS開発メンバの一人から得た情報である。