フィリピン人の定着率が最も高いとの顧客からの回答を受けて考えたフィリピン人OFWの「たくましさ」 | アジアで競う企業と人材を応援するブログ

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先日、アジア10ヶ所以上の国・地域に
拠点を展開する顧客と会食した際、
現地人材の定着率について質問した。
定着率が最も高いのは、フィリピン人との回答。
特に、フィリピンのエンジニアは、
技術もハングリー精神度も比較的高い。
また、ほぼ全員が英語でのコミュニケーションが可能という。

同国の失業率が国際的にみても高いなど、
社会的な背景があることも指摘された。
不安定な雇用社会では、技術を高める意識も必然的に高くなる。
英語もできて、技術が高ければ、
他拠点がもつ顧客へのサービスにおいても
ピンチヒッターとして派遣されることが増えるようだ。
海外出張では、日当も支給されるため、
出張は拒まれるどころか、歓迎される。
さらに、海外における評価が高まれば、
海外顧客からの指名も受けやすい。
とにかく一生懸命ひたむきに頑張っているようだ。
定着率が高く維持されていることが十分に理解できた。

他方、最も定着率が低い国の一つにタイが挙げられた。
技術者はだけでなく、ほとんどの職種において、
就労に対して「緊張感がない」という。
また、他拠点と比べると、
技術者に限っていえば、英語が不得手な人材も多い。
タイにおける現象も、逆の意味で社会的背景と関連がある。
タイでは、失業率が低く維持されるなか、
海外、特に日本からの投資も増え続けており、
仕事はいくらでもある、いわば「売り手市場」が続いている。
そうなると、ハングリー精神に欠ける人材が増えるのも必至。
よって、定着率へも影響を与える。

実際、昨年訪問したマニラ空港の税関では、
OFW(Overseas Filipino Worker)という
特別なカテゴリーを発見した。
調べると、フィリピンでは、人口9000万人の
約1割である約800万人が、
海外出稼ぎ労働者として海外で仕事をしている。
外国で働き、そこで外貨を稼ぎ、母国へ海外送金することを
普通のようにやってのけているフィリピン人。

その意味では、一般的にタイ人がタイをこよなく愛し、
タイを離れたがらない実態も、
今回の定着率に対する回答にあった
フィリピンとタイのコントラストの一部を説明できる。
国を愛することはその国に生まれ、
そこで育てられた人間として当然の姿。
ただ、フィリピン人のように、母国をいったん飛び出して、
他国への貢献を通じて母国へ貢献する。
フィリピン人の定着率が最も高いことを聴いて、
フィリピン人の就労に対するそんな「たくましさ」を確認することができた。