最近、小児科でよく見かける病気にマイコプラズマ感染症というのがあります。

熱やせきがでている患者さんに「マイコプラズマですね」とか、肺炎で入院した患者さんに「マイコプラズマ肺炎です」と言っても、まず理解してくれる人はほとんどいらっしゃいません。

「先生、マイコプラズマって何ですか」と聞くか、はっきりわからないままに聞き流している人が大部分だと思います。

そこで今回は、マイコプラズマ感染症という聞き慣れない病気についてお話したいと思います。

ちょっと専門的になりますが、マイコプラズマというのは病気を起こすいわゆるぱい菌の一つで、細菌とウイルスの中間に属する病原体のことであります。そして、マイコプラズマによる感染症は四年ごとに、ちょうどオリンピックの年に合わせて流行する傾向があります。来年(一九九六年)はアトランタオリンピックの年でもあり、今年から来年にかけては流行することが予想されますので十分注意する必要があります。


マイコプラズマによる気管支炎や肺炎で入院したり、外来で治療を受けている人が増えています。症状はどういうものかといいますと、熱やせきなどのいわゆるかぜ症状と似ていますが、熱は比較的長く続き、せきも激しく続くのが特徴であります。

また、時には赤いブツブツした発疹が出たりします。実際にはかぜといわれて治療しているが、一向に症状がよくならないというときなどにマイコプラズマ感染症ではないかと疑われるのが普通です。

そして、困ったことに、普通のかぜ薬として広くよく使われている薬に反応しにくく、ある種の薬剤を使わないとなかなか症状が治まらないということがあります。それはマイコプラズマという病原体の形の特殊性によるものです。しかし、マイコプラズマ感染症は放っておいても自然に治癒していく傾向があります。健康な人であれば症状が少し長引いてもそのうち治まるだろうと、様子を見てもよいことがありますが、乳幼児やお年寄りなど抵抗力の弱い人では症状が長引き重篤になることもありますので注意が必要です。

マイコプラズマ感染症の症状としては、かぜ様症状を呈することが多いのですが、時には肺炎や髄膜炎、脳炎などを起こして重篤になることもまれではありません。

そのような時は入院治療が必要となりますので、かかりつけの主治医によく相談してちゃんと治療した方がよいと思われます。

ではどうのようにしてマイコプラズマ感染症と判断するのでしょうか。


いろいろな検査がありますが、一般的には採血して血清抗体価を調べます。が、それも一回ではなかなか判断しづらく、何度か採血することが必要となります。

しかし症状がよくなると病院にくる人も少なく、また症状の軽い時に積極的に検査するのも難しいため、実際は考えられているよりもっと多くのマイコプラズマ感染症があるのではないかと思われます。


最近はDNA診断など、より簡便で迅速な診断法が実用化されつつあり、期待されます。