比較蛋白質とアミノ酸パタン
 アミノ酸
 (mg/窒素1g)
イソロイシン ロイシン リジン 含硫アミノ酸 芳香族アミノ酸 スレオニン トリプトファン バリン
 比較蛋白質(FAO)  270  306  270  270  360  180   90  270 
 アミノ酸パタン(1973年FAO/WHO一般用)  250  440  340  220  380  250   60  310
 アミノ酸パタン(1985年FAO/WHO・UNU2~5才)  180  410  360  160  390  210   70  220


 御飯(米)と大豆食品を一緒に食べると、必須アミノ酸は欠乏しない
 
植物性蛋白質のアミノ酸スコアは、低く、大豆は86、精白米は65(Lysine score)です。


 大豆 は、必須アミノ酸のリジンは多く含むのですが、含硫アミノ酸が少なく、逆に、精白米は、大豆に多いリジンが少なく、大豆に少ない含硫アミノ酸は多いです(注2 )。
 そこで、大豆(大豆食品)と精白米(御飯)を、一緒に食べると、両者の欠乏している必須アミノ酸を補うことが出来ます注3 )。 


 日本人が、江戸時代以前に、肉や魚を食わなくても、筋肉が頑丈な肉体を築けたのは、米を大豆と一緒に食べると、必須アミノ酸は欠乏しないからだったと考えられます。
 なお、小麦粉(アミノ酸スコア44)は、精白米より、リジンの含量が少ないので、例えば、パンを大豆と一緒に食べていたのでは、必須アミノ酸が欠乏しやすいと考えられます。ですから、パン食の西欧食文化では、肉や卵を食べる必要があったと考えられます。

 なお、ネズミに、牛肉の蛋白質と、大豆の蛋白質を摂取させた実験結果では、牛肉の蛋白質を摂取したネズミは、プールで泳がせると、瞬発力は優れていたが、持久力はなかったそうです(15分間しか泳げなかった)。


 他方、大豆の蛋白質を摂取したネズミは、45分間、泳ぎ続けることが可能だったそうです。

 プロテインスコアとアミノ酸スコアの比較
 表3に、プロテインスコアとアミノ酸スコア(1973年FAO/WHO一般用パタン)を比較しました。
 ( )内は、第一制限アミノ酸です。SAAは、含硫アミノ酸を意味します。 
 動物性蛋白質のプロテインスコアは、高く、鶏卵は、100です(注4 )。
 牛乳は、アミノ酸スコアは、100ですが、プロテインスコアは、85です(注5 )。
 貝類のアミノ酸スコアは、シジミ (しじみ貝)は、95です(アサリは、81です)。

 表3 プロテインスコアとアミノ酸スコアの比較
 食品  プロテインスコア  アミノ酸スコア
 鶏卵(全卵生)  100  100
 牛乳(生乳)   85(SAA)  100
 アジ(生)   78(Trp)  100
 サケ(生)   78(Trp)  100
 アサリ   66(Trp)   81(Val)
 ロース脂身なし   84(Trp)  100
 鶏むね肉   84(Trp)  100
 鶏肝臓   93(SAA)  100
 木綿豆腐   67(SAA)   82(SAA)
 ほうれん草   41(SAA)   50(SAA)
 トマト   51(Trp)   48(Leu)
 精白米   81(Lys)   65(Lys)
 小麦粉   56(Lys)   44(Lys)

 植物性蛋白質だけを摂取していて、長生き出来るか?
 ベジタリアンの寿命が、長いとは言えないようです


 貝原益軒の「養生訓」には、肉だけでなく、魚を食べる人も、寿命が短くなるように、書かれてあります。しかし、これは、平均寿命が40歳に満たない時代の話しです。
 チンパンジーは、普段は、草食ですが、集団で、他の種類の猿を襲って殺し、肉食をするそうです。


 肉や卵など、プロテインスコアが高い、動物性蛋白質 を摂取することは、免疫力を高め、感染症に打ち勝つのに、必要と考えられます。


 江戸時代にも、徳川家康は、庶民には肉食を禁じながら、自らは、「薬食い」と称して、牛肉の味噌漬けを食べていたそうです。


 ですから、植物性蛋白質だけを摂取するベジタリアンは、蛋白質が欠乏するおそれがあります。
 戦後、日本で、青鼻を垂らす子供さんが少なくなったのは、動物性蛋白質の摂取量が増えて、白血球や補体 などの免疫力が強くなり、慢性的な蓄膿症になりにくくなった為とも、考えられます。
 他方で、動物性蛋白質(肉類、魚、鶏卵、牛乳など)を大量に摂取すると、腸内で、アンモニア 、硫化水素、インドール、メタンガス、ヒスタミン、ニトロソアミン などの毒性物質(毒素)や、活性酸素 が生成されます。これらの毒性物質や、活性酸素は、肝臓 や腎臓に負担をかけたり、老化を早めたり、発癌を促進したりすると言われます。
 また、蛋白質を大量に摂取すると、アミノ酸の分解で生じる窒素を、肝臓尿素回路 で処理したり、腎臓から排泄する為に、肝臓や腎臓に負担がかかります。動物性蛋白質(肉、魚など)を多く摂取すると、尿中のリン酸 塩、硫酸 塩が増加し、尿細管での酸塩基平衡 調節に負担が掛かり、尿が酸性化します(カルシウム再吸収が抑制され、尿中カルシウムが増加し、尿路結石 のリスクも高まります)。
 さらに、

 加齢と共に(70歳を過ぎると)、腎機能が低下し、腎臓からのリン(P)の排泄が低下し、血液中のリンが増加し、骨からカルシウム(Ca)が動員され、骨粗鬆症になり易いとも言われます(注6 )。

 植物は、カルニチン の生成に必要な2種類のアミノ酸(リジンとメチオニン)の含量が少ないので、ベジタリアンの人は、血漿カルニチン濃度や、尿中カルニチン排出量が、低下することがあります。ベジタリアンの人は、完全な菜食でなく、不足しがちな、含硫アミノ酸(メチオニン)を摂取する為に、卵(鶏卵)なども、補った方が、良いでしょう。
 カルニチン(アシルカルニチン)が欠乏すると、慢性疲労症候群と言う病気になるとも、言われます(注7 )。

 脳は、体に必要なアミノ酸を、感知する
 
マウスの実験では、脳が、体内に欠乏しているアミノ酸を感知して、その欠乏しているアミノ酸を多く含むエサを、自然と多く摂るそうです。
 人間も、断食 などをすると、自分に必要としている栄養素を含む食品が、自然と解るようになると言う人もいます。