がんの患者数が世界中で急速に増加している中、がんの新たな予防・診断・治療法の開発などを進める国際共同プロジェクト「国際がんゲノムコンソーシアム(ICGC)」の最初のプログラムが11月19日までに決定した。日本からは、理化学研究所、国立がんセンター、医薬基盤研究所が参加しており、肝炎ウイルス関連の肝臓がんのゲノム変異について包括的で高精度の解析に着手する。

 米がん学会によると、昨年、世界で約760万人ががんで死亡し、1200万人以上が新たにがんと診断された。がんの解明と克服に新たな進歩がなければ、2050年には1750万人ががんで死亡し、2700万人ががんに罹患すると予測されている。がんの早期発見や、がんによる死亡の低減が世界共通の課題となっていることから、日本、米国、英国、オーストラリア、カナダ、中国、フランス、インド、シンガポール、スペインの10か国13機関が集まり、今年4月にICGCを発足させた。

 ほとんどすべてのがんは、遺伝子の「設計図」であるゲノムに変異が生じることで、正常な分子経路が破綻(はたん)し、無秩序な細胞増殖を起こすことが分かっている。また、特定のがんや病態では、特徴的なゲノム変異が認められることが明らかになってきていることから、ICGCでは、それぞれのがんに生じたゲノム変異を網羅的に同定し、「カタログ化」を進めることで、がんの新たな予防・診断・治療法の開発に役立てる。

 具体的な取り組みについては、ICGCのメンバーが、ICGCが定めるデータ収集・解析に関する「共通基準」に従い、特定のがんを対象にしたゲノム変異の解析を分担する。このほど米国でICGCのワークショップが開かれ、最初のプログラムを決定。日本の3機関が肝炎ウイルス関連の肝臓がん、カナダが膵臓がん、中国が胃がんなどのゲノム変異について解析する。

 ICGCでは、プロジェクトによるがんゲノム変異の「カタログ」を世界中の研究者に無償提供する予定で、今後さらに多くの国や機関の参加を得て、臨床的に重要な50種類のがんゲノム変異の「カタログ」作成を目指す。