プロレスの素

プロレスの素

プロレス・格闘技についての独り言、自分の素(もと)、在りのままに感じたことを書き綴るブログです。

9月27日に行われたWBC世界バンタム級タイトルマッチで、挑戦者の那須川天心は王者・井上拓真に0対3の判定で敗退、世界王座獲得はなりませんでした。

採点は114-113、116-111、116-111。天心は7回に鮮やかな左ストレートでダウンを奪いましたが、その後は井上が立て直し、王座を防衛しました。

私はRIZIN時代から天心を追いかけてきました。キックボクシングで圧倒的な実績を残した彼が、その地位に安住せず、ボクシングという新しい世界へ飛び込んだ時から、いつか世界のベルトを巻く姿を見たいと思ってきました。

今回こそ、その夢が実現するのではないか。そう期待して見守った一戦でした。

正直に言えば、私は採点に納得できません。4回終了時点で、一人のジャッジが40-36と井上をフルマークで支持しましたが、そこまで一方的な内容には見えませんでした。天心の左ストレートや独特の距離感は機能しており、決して引けを取っていなかったと思います。

そして7回、天心の左が井上を捉えました。

あの瞬間、「いける」と思いました。天心が世界のベルトを一気に引き寄せた。12ラウンドを通じて、最も明確に試合を動かした一撃でした。

井上はダウンを喫しても慌てず、ロープ際で追撃をしのぎ、次の8回には冷静にポイントを取り返しました。危険を抑えながら、各ラウンドの小さな優位を積み重ねる。世界王者ならではの技術だったと思います。

ただ、井上が「ポイントを取る戦い」に長けていた一方で、試合そのものを決定づける勝負を仕掛けたのは天心だったように、私には見えました。

試合後、天心は「ポイントゲームに負けた」と語りました。

ボクシングでは、相手を倒す力だけでなく、各ラウンドを確実に印象付ける技術も求められます。その意味では井上の勝利も理解できます。それでも、116-111という数字ほど、両者に差があったとは思えません。

天心は負けました。しかし、完敗ではなかったと思います。

前回の対戦から約10か月。世界王者との差を確実に縮め、今回は明確なダウンまで奪いました。世界のベルトに手が届くところまで来ていることを、自らの拳で証明したのです。

試合後に流した涙には、この一戦だけでなく、ボクシング転向後に積み重ねてきた苦労が滲んでいました。

キックボクシングで築いた地位や名声を脇に置き、別競技で一から技術を学び直す。勝っても内容を批判され、負ければ過去の実績まで否定される。それでも、彼は世界王者になるという目標から逃げませんでした。

だからこそ、ここで終わってほしくない。

接戦のラウンドを明確に勝ち取り、観客の心だけでなく、ジャッジの採点も動かす技術を身につけてほしい。彼なら乗り越えられると信じています。

天心は常に難しい道を選び、周囲から何を言われても自分の可能性を信じて挑戦してきました。私はその姿に惹かれてきました。今回の敗戦を見て、その思いはむしろ強くなりました。

いつか世界のベルトを腰に巻き、あの日の涙が無駄ではなかったと証明する姿を見たい。

私はこれからも那須川天心を応援し、彼が見せてくれる夢の続きを最後まで見届けたいと思います。