プロレスの素

プロレスの素

プロレス・格闘技についての独り言、自分の素(もと)、在りのままに感じたことを書き綴るブログです。

アンドレアス・マトラ氏の著書を拝読しました。


この本を知るきっかけは、翻訳を担当された沢田智さんとの出会い。舟橋慶一さんを囲む会で、沢田さんからこの本のチラシを頂きました。2025年8月なので、ちょうど発売直前のことでした。


始まりは、沢田智さんが 2021年にドイツで出版されたボックの自伝を見つけたこと。ドイツ語のまま、2ヶ月かけて読まれたそうです。この本の内容を日本のみんなにも伝えたいという思いから、クラウドファンディングで資金を集め、出版社を巻き込んで翻訳権を買い取られたそうです。


沢田さんの思いがなければこの本は世に出ることはなかった。とても貴重な本だと思います。


ボックといえば「シュツットガルトの惨劇」。猪木は薄暗い照明、硬そうなマットの上で地味に叩きつけられ、派手な動きがないまま、4分10ラウンドを戦い抜きました。結果は猪木の判定負け。アリと引き分けた後だっただけに、新間さんが激しく抗議されたのを覚えています。


この本では、猪木の欧州ツアーを売り込みにボックが新日本プロレスにアプローチする過程が克明に描かれています。交渉に当たったのは新間さん。欧州アマレス王者とはいえ、ボックの信用力に疑問を持った新間さんは猪木招聘には五千万円かかること、前金で2/3を払うことを条件としました。


単発では回収できないため、ツアーを組んで回収する案を思い浮かべ、ウィレム・ルスカ、カール・ミルデンバーガー、ウィルフレッド・デートリッヒ等、欧州の強豪を集めることに。ボックはレスラーだけではなく、プロモーターとしても才覚があったということですね。


それ以外にも、ボックは集客のアイデアとして、ヒグマをリングにあげたり、トップレス女子ボクシングを開催する等、かなり破天荒なこともやっていたそうです。実際、トラブルも絶えなかったようで、収監されたことも描かれていました。


プロレス以外にも、ステーキ店やディスコの経営、タイで貿易事業をする等、ビジネスマンとしてもアグレッシブに活動されていました。ボックの人生にとって、猪木招聘は一つのパーツでしかなく、常に新たなビジネスを追い求めていたことが分かります。沢田さんはボックのこんな姿を伝えたかったのではないでしょうか。


そのボックも2025年暮に亡くなられました。享年81歳、とても濃い人生を送られました。先に鬼籍に入られた猪木、新間さんが語らなかった事実をボックの自伝で知ることが出来たのは興味深い。


故人のご冥福をお祈りします。合掌