今回リマスターされた、フルトヴェングラー指揮によるベートーヴェン交響曲全集から、第6番へ長調《田園》を聴いてみました。

1952年11月24, 25日にウィーンにてセッション録音。

フルトヴェングラーが指揮するベートーヴェンの交響曲は、一般に奇数番号の作品に関して高い評価が得られています。
この演奏も、第1楽章はもう少し、しなやかさが欲しくなります。ゆったりとしたテンポで進める演奏は、「田園交響曲」というより「交響曲第6番」をガッチリ表現しているような感じです。ライヴでは、もう少し勢いや流れがある演奏をすることがあるのでしょうが、この演奏は「田園」にしてはやや重たく演奏です。実は、以前第二次大戦中(1943年12月)の録音が発売されて、録音はあまり良くないものの、演奏はこの演奏よりも流れと勢いを感じさせたものでしたが、何故か廃盤になったままです。第6番の録音は、この他にベルリン・フィルを指揮した放送録音ライヴが複数出ています。好みで言えば、1947年5月の復帰演奏会ライヴや晩年のベルリン・フィルとのルガーノ公演の方が演奏に流れがあります。

音質面ではDSDリマスターの効果があり、冒頭から弦のボウイング音が良く出ています。1950年代のセッション録音では、フルトヴェングラーのファンならSACDを買う価値があるでしょう。

但し、同じディスクに収録されている第8番ではSACDでも元の貧弱な音はどうしようもありません。第8番へ長調は、1948年にストックホルム・フィルハーモニーに客演した際のライヴ録音。当時の放送録音としては良く採れてますが、残念ながらリマスターの効果はあまり感じられません。
この演奏は日本フルトヴェングラー協会のLP、東芝(当時)から発売されたLPを持っています。この演奏がレコード化された当時は、フルトヴェングラー指揮のベートーヴェンの第8番の演奏がメジャーレーベルから初めて発売されたことで話題となりましたが、現在は数多くの同曲のライヴ録音がCD化されており、当時に比べて希少価値も減少しています。
演奏はやや重たいもののなかなか見事です、音質はなんとか鑑賞には耐えられるレベル、他のセッション録音に比べて差が大きいと言わざるを得ません。

やはり、DSDリマスターやSACD化のメリットを受けるには、元の録音の良さが求められます。
今回、日本のEMIからの依頼でリマスターされたという、ベートーヴェンの交響曲全集から第5番ハ短調を聴きました。

この交響曲第5番ハ短調の演奏は名盤として有名だったもので、最近は1947年ライヴが代表的名盤と言われますが、以前はこの1954年のセッション録音がフルトヴェングラーの第5番の代表とされていた事もあります。

1954年2月28日、3月1日 ウィーンでのセッション録音。

1947年のベルリン・ライヴと比べて、全体に落ち着いた演奏で、第2楽章などは、近年の演奏に慣れた耳にはゆっくり過ぎると感じますが、この演奏が録音された1950年代では標準的なテンポだったでしょう。
第4楽章フィナーレも1947年ライヴのように大爆走とならずに堂々と終結します。
1940年代の他のライヴ録音とは曲の造形が大きく異なり、よく言えば堂々とした、別の言い方では勢いを抑えた表現です。細部ではフルトヴェングラー固有のテンポの変動がありますが、何度もきいた演奏のためか、先が読めてしまうようになり、今となっては初期の驚きは感じなくなりました。


この曲は過去に何度も再発売を重ねてきましたが、私が最初に聴いたのは「ブライトクランク」と呼ばれる擬似ステレオ方式で広がり感を合成したLPでした。当時はステレオっぽい感じでしたたが、オリジナル・モノの盤を聴くようになってからは、不自然さから敬遠してしまいました。

今回のリマスターの傾向として、後年の録音の方が音質改善効果が感じられます。
この演奏は、フルトヴェングラー最晩年(同年11月30日に死去)の録音だけあって、以前のCDよりも明らかに聞きやすくなっています。というより、過去のEMIのCDではマスタリングの限界なのか、不満が多かったのが事実です。

一部には古いLPから復刻した「板おこし」のCDを珍重するファンもいますが、今回のリマスター版なら大半のファンは受け入れられると思います。

今回のSACD盤は、自宅の再生環境で聴く限りでは、過去のCDを凌ぐ良好な仕上がりになっています。もちろん、LPとは異なる音響バランスに仕上がっていてアナログ・サウンドの再現を期待すると失望することになります。

個人的な感想ですが、国内版SACDと輸入盤21枚組との音質差は僅かなため、一般には価格の安い輸入盤をお薦めします。

ドイツ・ハルモニア・ムンディ設立50周年記念限定BOX(50CD) から、感想を書いたのが1枚だけなので、時々追加で感想を書こうと思おます。(いつまで続くことか・・・・)


Disc.35 ペルゴレージ:歌劇「奥になった女中(小間使い)」 (rec. 1969) このディスクは、BMGの「バロック・マスターワークス」(60CD Set)と重複しているが、それに値する名盤だと思います。
このCDの演奏者:
女中セルピーナ:マッダレーナ・ボニファッチョ(S)
老人ウベルト:ジークムント・ニムスゲルン(B)
管弦楽:コレギウム・アウレウム合奏団

ジークムント・ニムスゲルンとマッダレーナ・ボニファッチョの掛け合いは、テンポもリズムもよく、後のモーツァルトなどにつながる流れを感じさせます。歌唱法も、近年のバロック音楽固有のものではありませんが、違和感はありません。
ニムスゲルンはバッハ等のバロック音楽からヴァーグナー、そしてシェーンベルクやバルトークなど20世紀の作品まで幅広い役柄を歌っていますが、頑固親父風の性格表現もうまそうです。
セルビーナ役のボニファッチョについてはよく知りません。このCDでは、ちょっとずるいセルビーナを軽快に演じています。
「黄金の楽団」を意味するコレギウム・アウレウムの演奏も、最近のピリオド楽器アンサンブルでは一般的となったビブラートを抑制する奏法ではありませんが、これはこれで聴いていて楽しいものです。
使用楽器や細かい奏法にこだわらずに、このオペラ・ブッファを楽しめるので、やはり名演奏と思います。

このオペラの題名は、HMVなどでは「奥様になった小間使い」と紹介されていますが、邦題としては「奥様になった女中」や「奥様女中」の方がより一般的だと思うので、以降は「奥様女中」と呼ぶことにします。

『奥様女中』(原題:“La serva padrona”)はジョヴァンニ・バッティスタ・ペルゴレージ作曲のオペラ・ブッファで彼の代表作の一つ。
原作はヤコポ・アンジェロ・ネッリの戯曲で、脚本はジェンナロ・アントニオ・フェデリーコが執筆しました。彼ののオペラ・セリア『誇り高き囚人 (Il Prigionier Superbo)』の幕間劇(インテルメッゾ)として、共に1733年に初演されています。
本来はメインの演目、『誇り高き囚人』は人気が出ずに上演は失敗しましたが、『奥様女中』は単独で人気を博して、今でも名作として評価されています。

ところで、初演された1733年っていつ頃?
この頃、ヨハン・ゼバスティアン・バッハはライプツィヒの聖トーマス教会の音楽監督(1723年就任)
交響曲の父、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが生まれたのが1年前の1732年。
江戸時代の蘭学医杉田玄白が生まれたのが1733年。
当時の将軍は、八代徳川吉宗(1716年就任)。江戸町奉行が大岡越前守忠相(1717年就任)。

つまり、「暴れん坊将軍」と同じ時代というわけで・・・・全然関係ありませんね。(^^;)



第1部:
金持ち老人ウベルトは、女中のセルピーナにホット・チョコレートを持ってくるのが遅いと腹を立てている。彼女はしぶしぶやってきたが、説教を軽く聞き流す。ウベルトが「自分は結婚するから、出て行け」と言うと、セルピーナは「だったら、私と結婚しましょう」」と言う。(雇い主に対して逆セクハラか?)
ウベルトはあきれるが、セルピーナが自分に惚れていると思い込む。

第2部:
セルピーナは一計を案じ、下男のヴェスポーネを兵士に変装させて自分の婚約者として連れて来る。
ウベルトに「彼と結婚するので、お別れです。」と悲しそうに告げる。婚約者に化けたヴェスポーネは黙って怖そうにしている。セルピーナは婚約者が持参金を要求している、と説明する(兵士はしゃべらない)。
ウベルトが渋ると、兵士が怒る振りをして、セルピーナは「もしも持参金を出せないなら、だんな様がセルピーナと結婚するしかない」、と説明する。
怒った様子の軍人に慌てたウベルトはつい、「セルピーナと結婚しますと」言ってしまった・・・
セルピーナは聖書を取り出し、ウベルトに婚約の誓いをさせ、ヴェスポーネの仮装を取る。
ウベルトは騙されていたことを知るが、セルピーナの魅力に負けて、結婚することにする。

このように、あらすじは分かり易い/ばかばかしいもので、吉本新喜劇なら「あのオジン、アホやな~」でしょうか。

近年ののミチョランマ(未聴CD)の最初の山となったBOXです。


2009年に購入しましたが、実はまだ半分も聴いてません。(決してつまらないのでなく、昨年は買い過ぎたため)

ドイツ・ハルモニア・ムンディ(DHM)は1958年に創立されました。
ハルモニア・ムンディ」とは、ラテン語で『世の音楽』という意味です。
1993年にBMGがハルモニア・ムンディを買収、以降は同グループの古楽部門として、制作活動を続けています。


購入当時の価格がHMVでマルチバイ割引を使って、5千円台 (1枚あたり107円!)
単純に考えても、レギュラー価格のディスク2枚分程度の金額で50枚組が買えてしまいます。
つまり、お気に入りのディスクが3枚あれば元が取れてしまう計算になるわけです。

幸いなことに、手持ちのライブラリとは重複が殆どなかったので、あまり悩まずに
購入しましたが、もし重複するディスクが多かったら逆に怒ったかもしれません。(でも買ったかも)

50枚組の激安セットといっても、古い放送録音やライセンス切れの他社音源の寄せ集めと違い、50年の歴史を誇るDHMの自社音源から、90年代の比較的新しいCDが中心になっています。何枚かは「スプレンダー・シリーズ」として廉価盤で発売されていましたが、主にフランスでよく売れたタイトルを集めた(BMGからのアナウンスによる)ものだそうです。

このBOXには定評ある演奏が多く、手持ちの他のCDと聴き比べても楽しいものです。
レオンハルト3度目のゴルトベルク変奏曲をカール・リヒターと比べて、こんなに違うのか!とか
鈴木秀美の無伴奏チェロ組曲(旧版)をピエール・フルニエの現代楽器と聴き比べ、これも違いを楽しめます。
「四季」も、個性的な通奏低音を他の演奏と比べるだけでも面白いものです。

もちろん、ばら売りだったら買わないだろうと思われるタイトルも含まれていますが、逆にこれが縁で出会った作品群も結構あるので、それもまた楽しみの一つだと思います。
例えば、
Disk 11: 知られざるスペイン・バロック
 アントニオ・デ・リテレス:
  “Seguidillas”、“Los Elementos”、“El estrago en la fineza o Jupiter y Semele”、
 作者不詳:
  “Ruede a Vola”、“Discurso de ecos”、
  “Cancion Franzesa”、“Diferencias sobre la gayta”、
 セバスチャン・ドゥローン:
  “Veneno es de amor la envidia”、“El impossible mayor en amor le venze Amor”
  ~ エドゥアルト・ロペス・バンゾ(指揮&cemb) アル・アイレ・エスパノール

正直なところ全然知らない作曲者/作品でしたが、聴いてみると「スペイン風」のバロック・カンタータ集といった趣で、結構楽しく聴きとおしてしまいました。

とりあえず、各タイトルとHMVのサイト(単品は廃盤が多い)を引用しておきます。リンクが切れたらご免なさい。


Disc.01 ドゥランテ:マニフィカト、アストルガ:スターバト・マーテル、ペルゴレージ:『主よ、あなたに告白します』 (rec. 1995)
Disc.02 J.S.バッハ:オーボエ協奏曲集(5曲) (rec. 1992)
Disc.03 J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV.988 (rec. 1976)
Disc.04 J.S.バッハ:音楽の捧げ物 BWV.1079 (rec. 1994)
Disc.05 J.S.バッハ:モテット BWV.225-230 (rec. 1995)
Disc.06/7 J.S.バッハ:ミサ曲ロ短調 BWV.232 (rec. 1996)
Disc.08 ヴィヴァルディ:「オリンピア」序曲、シンフォニア RV.158、J.S.バッハ:組曲第4番 BWV.1069他、 (rec. 1992)
Disc.09/10 J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 BWV.1007~1012 (rec. 1995)
Disc.11 知られざるスペイン・バロック  (rec. 1994)
Disc.12 17世紀のチェロのための作品集 (rec. 1988)
Disc.13 ビバー:レクイエム イ長調/スッテファーニ:スターバト・マーテル (rec. 1994)
Disc.14 ボッケリーニ:チェロ協奏曲とシンフォニア集 (rec. 1988)
Disc.15 ブクステフーデ:室内楽作品集 (rec. 1992)
Disc.16 カッチーニ:麗しのアマリッリ~新しい音楽 (rec. 1983)
Disc.17 フランソワ・クープラン:室内楽作品集 (rec. 1993)
Disc.18 ジャコモ・ファッコとヴィヴァルディ (rec. 1999)
Disc.19 アントニ・フォルクレイ:ヴィオール小品集とクラヴサン小品集 (rec. 1991)
Disc.20 フレスコバルディ:音楽の花束 Vol.1 主日のミサ (rec. 1994)
Disc.21 フレスコバルディ:音楽の花束 Vol.2 聖母のミサ (rec. 1994)
Disc.22 グルック:オペラ・セレナード「中国人」 (rec. 1985)
Disc.23 オルランド・ラッスス:モテットとミサ曲 (rec. 1975)
Disc.24 オルランド・ラッスス:レクィエム、マニフィカト、モテット (rec. 1971)
Disc.25 アントニオ・デ・リテレス:歌劇「四大元素」 (rec. 1997)
Disc.26 リュリ:ディヴェルティスマン集 (rec. 1990)
Disc.27 マショー:「ノートルダム・ミサ」、ペロティヌス:グラドゥアーレ他 (rec. 1960~61)
Disc.28 J.S.バッハ以前の聖トーマス教会のカントールの作品集 (rec. 1992)
Disc.29 マラン・マレ:三重奏のための幻想的小品組曲集 (rec. 1996)
Disc.30 モンテヴェルディと同時代のマドリガーレ集 (rec. 1991)
Disc.31/2 モンテヴェルディ:聖母マリアの夕べの祈り (rec. 1994)
Disc.33 パッヘルベルとJ.S.バッハ以前のバッハのモテット集 (rec. 1993)
Disc.34 パレストリーナ:宗教合唱作品集 (rec. 1993)
Disc.35 ペルゴレージ:歌劇「奥になった女中(小間使い)」 (rec. 1969)
Disc.36 パーセル:劇音楽「予言者、またはダイオクリージャン」、ヘンデル/カンタータ 他 (rec. 1993)
Disc.37 無秩序の喜び~17世紀英国の2声部のコンソート (rec. 1994)
Disc.38 ラモー:歌劇「イポリートとアリシー」組曲 (rec. 1978)
Disc.39 ラモー:歌劇「プラテー」「ダルダニュス」より管弦楽組曲 (rec. 1997)
Disc.40 ラモー:バレエ付オペラ「ピグマリオン」 (rec. 1980)
Disc.41 ルベル:表題付きトリオ・ソナタ全集 (rec. 1996)
Disc.42 サント・コロンブ:「哀しみのトンボー」~ヴィオール作品集 (rec. 1996)
Disc.43 アッレサンドロ・スカルラッティ:ソロ・カンタータ集 (rec. 1998)
Disc.44 アレッサンドロ・スカルラッティ:ヨハネ受難曲 (rec. 1981)
Disc.45 テレマン:木管楽器のための協奏曲集 (rec. 1996)
Disc.46 ヴィヴァルディ:協奏曲集「四季」「海の嵐」「喜び」 (rec. 1996)
Disc.47 ヴィヴァルディ:歌劇序曲集、他 (rec. 1998)
Disc.48 ヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ集 (rec. 1986)
Disc.49 ゼレンカ:神の御子のミサ曲、聖母マリアのためのリタニア (rec. 1989)
Disc.50 ピゼンデル、ゼレンカ:シンフォニアと協奏曲集 (rec. 1994)