2011.03.23(水) 下北沢 風知空知
“PUPPY'S SOVEREIGN CAFE in 風知空知”
<延原達治アコースティックライブ>
席について大きく息を吸い込んで元気よく
「こんばんわっ!今日はみんなよく来てくれました。元気そうで何よりです」
でスタート。
毎回MCのネタには苦労してる中、今回は「ネタ」と片付けてしまうにはあまりに大きな出来事がこの国を襲い、延ちゃんの口からどんな風に語られるのかと期待する中、MCなしで黙々と曲が続く。
『シークレット・ラブ』に『シークレット・ハート』のシークレットつながり。なんでもかんでもあけっぴろげにせんでええっちゅー事かしら?(笑)
最初のMC。
「今日は、(一呼吸おいて)…放射能の雨ビンビンに降る中、みんなありがとう」
あぁ…延原達治(笑)。
『As tears go by』邦題『涙あふれて』。
震災以降、ニュース見ちゃうるうるしちゃってるよね、どうしても。ハラさんじゃなくても(笑)。
この日の衣装は久しぶりのアルカイーダターバンに赤のシルクシャツ。
「緊急事態なんで赤にしました。…水からも放射能が検出され、来年ぐらいには身長も50メートル位になって巨大化して火ぃ噴いて全員ゴジラになって…東京スカイツリー踏み潰そうぜ」
50メートルじゃ足りませんけどね、スカイツリー(笑)。ここで初めて地震発生時の話へ。その様子は、延ちゃんちの近くに住むハラさんもブログで書いてくれてた(http://yaplog.jp/freak-beat/archive/1526)ので割愛(笑)。
クラレンス・ヘンリーの『(I don't know why I love you) But I do』は新レパートリー。間奏では口笛も(きゃあ☆)。
「俺、原発は反対か賛成か?って言われると、反対に足突っ込んでるけど…」
と言って、いつになくシリアスに原発の話へ。
「地震の多いこの国で原子力発電所を建てるんなら、国民投票するとか…みんなが自分の事として社会意識とか持てるようになればいいなぁと思います」
「もしそれでも必要ってなれば、もう何が来てもビクともしないような原子力発電所になるように関係者も頑張るだろうし…でも実際、もう福島とか茨城とかあの辺ではきっと何十年も農業とか酪農とかは出来なくなるだろうから…風評被害とかじゃなくてね、そこにずっと暮らしてた人達の事も含め、みんな考えなきゃいけないよね」
「もし必要ないってなれば、それに代わる新しい発電手段を…ね、アイフォンとかアンドロイドとか作っちゃうくらいだからさ、だから電気メーカーも売りつけて3年くらいで壊れる製品をせっせせっせと作ってないで頑張ってもらうってのも、みんなで知恵出し合ってって事なんじゃないかなぁと思います」
「…こういう事言うと急にマジになったみたいでね(笑)、反省してますけど…」
と笑いながらも
「…でもまぁ、思った事言わなきゃいけない事は言わなきゃいけない場面があるなって気もしてるんで…」
「…申し訳ないよね、やっぱり。家の近所に原子力発電所建てられてる人の事思うと…」
「…家の近所に綺麗な海辺があったりするのにさ」
と結んで、綺麗な海辺の曲『PERFECT LOVE』へ。その後、怒涛のラブソング攻勢(笑)。こんな時だから、あえてラブソング。延ちゃんだね。
尺の関係で泣く泣く端折っちゃったけど、前回のMCでこんなのがあった。
* * *
オーガニックな生活をしてる友人達との集いがあって、友人達の作ったCDを聞いてる時、“大地”とか“地球”とかをテーマにする曲ばかりで、思わず
「“あの娘感覚”の曲はないの?」
と尋ね「そういう狭い範囲の個人レベルで歌作ってないから!」とたしなめられたと(笑)。
「俺には、半径5メートルくらいしか見えてないからさぁ(笑)」
* * *
今こそ、こういう感覚が必要なんだよね。そのオーガニックなお友達たちは速攻、東京を脱出したそう(笑)。
今回の地震では、私も地震直後に職場から帰宅を命ぜられるも電車は動いてないし、あやうく帰宅難民になりかけたが、通話はもちろんメールもネットも繋がらない中、Twitterのアプリだけはすぐに起動し情報収集には随分役立った。
でも気をつけなきゃいけないのはその発信元の信憑性で、全くの素人の人達(もちろんプロの人達もいるけど)の「つぶやき」である事は常に念頭に入れ、流れるタイムラインに溢れる情報の、どれを信じてどれを疑うかの千里眼は養わなければならないという事。
震災のニュースが地震や津波の被害状況から原発事故へとシフトされてくると、私がフォローする人の中には音楽関係の人も多く、当然“原発反対”を唱えたキヨシロー信者も少なくなく、鬼の首をとったかのように原発の危険性やら政府の発表の隠蔽を暴くようなリツイート(本人のつぶやきではなく他所から拾ったツイートなり情報を自分のフォロアーに知らせる機能)を流す人が増え始めた。
ちょうどこのソブリンの前日、ただでさえ独り暮らしで震度に敏感なボロアパートに住み不安な日々を過ごす中、次から次へと自分のタイムラインを埋めていく不安を煽るリツイートが怖くなって、何人かのフォローを外したばかりだった。
まぁ、嫌ならそうやってフォローを外せば済む話なのだが、少なからずクリエイティブな仕事にかかわる人で、「ファン」と称する人もいてフォロアーも多く影響力も大きかったりする人には、その浸透力は計り知れない自覚を持って欲しいと思った。
キヨシローはそんな不安を煽る事が言いたかったんじゃないハズなんだよなぁ…。
延ちゃんが歌ってくれるラブソングを聞きながら、そんな事を考えていた。
第一部ラストの曲の前、
「今日はホントに、まだ暮らしも落ち着かない中、みんないつもとおんなじようにソブリン・カフェに集まってくれて、ホントにありがとう。嬉しいです」
(拍手)
「…いい根性してるよね」
一言余計(笑)。でもこれが延ちゃん(笑)。
「こないだレッドクロスの“緊急ナイト”の時も歌った歌ですけど…こういう事なんじゃないかなって思うんですよね」
と言って始まった、コステロもやってたニック・ロウ作曲の『(What's so funny 'bout) Pease love and understanding』(延ちゃんに聞いた友人が教えてくれた)。震災後だからって、特別な事をやる訳でもなく、淡々といつものレパートリーをいつものように演奏された中、おそらく唯一、今回用に選曲されたであろう名曲が延ちゃんのレパートリーに加わって、第一部終了。
第二部も、第一部以上にいつもの曲をいつも通りに、M原さん情報やらOKAMOTO'Sのドラムの子のお母さん(笑)の話やらプロレスのアウトサイダーの話やらで笑いをとりつつ、震災前と同じように演奏が進む。
それでも、先月まではなんとなく貧乏なお友達に歌ってあげてんのかなぁぐらいに思ってた励ましソングも、前回から今日までに起きたあまりに悲惨な現実に、その対象は明確となり、この歌声が今現在も苦難と直面してる多くの人達にどうか届きますようにと願うばかり。
『IT'S GONNA BE ALRIGHT』エンディングでは
♪なんとか~なるだろう~ を ♪なんとか~しなくちゃ~
に変えて歌う。さすがに今回ばかりは楽観できないもんね。国レベルで受けたダメージはかなり深刻。被災した人もそうでない人も、それぞれが「なんとかしなくちゃ」という危機感を持たなきゃ、この国の復興は困難。
第一部のテーマが“愛”だとしたら、第二部後半は“自分”かな?と思うくらい、延ちゃんお得意の十八番が続く。それが延ちゃんなりの支援。Queのメッセージでも書いてたけど、自分が今までやってきた事をやる。そう言えば、震災後いろんなライブが自粛で中止や延期になる中、何故かソブリンはなんの疑いもなくやるもんだと思ってたな。中止になるかも?なんてコレっぽっちも思わなかった。延ちゃんを信じて、ずっと延ちゃんについてきたからね。この信頼は揺るがない。
余震も続いて原発事故も展開があって不安な日々が続くけど、私が平気でいられるのはこの人がいてくれてるからに他ならない。
先程、今回用の選曲だと書いた第一部最後の『Pease love and understanding』とは別に、この日の『TIME WAITS FOR NO ONE』は、ソブリンでは何度となく演奏される曲ながらも、今回はことさら魂に響いて届く。時間は誰も待ってはくれない。今を精一杯生きなきゃね。
いつも通り本編が終わり、アンコール2曲めでは
「4月からはまたバンドのツアーも始まって、北の方も南の方もいろいろ行くんですけど、…楽しみで~す」
と言って『気ままな旅』へ。今こそ、トラベリン・バンドの本領発揮ですな。行ってらっしゃい。
ダブルアンコに「まだ時間大丈夫?」で、大ラスは
「“もう悲しみは終わりね”って曲です」
と言って『It's all over now, baby blue』で和やかに終了。
来月は4月26日(火)。来月には被災地の復興が少しでも進んでいますように。原発周辺の人の安全が守られますように。多くの悲しみが少しでも減りますように。
※問:風知空知 03-5433-2191 (17時~25時)
※ ※ ※
セットリスト
第一部
01.Redemption song (Bob Marley)
02.SECRET LOVE
03.SECRET HEARTS
04.As tears go by (The Rolling Stones)
05.Hey girl (The Roosters)
06.忘れ得ぬ君 (ザ・テンプターズ)
07.(I don't know why I love you) But I do (Clarence 'Frogman' Henry)
08.PERFECT LOVE
09.A面で恋をして (ナイアガラトライアングル)
10.Heart beat (Buddy Holly)
11.ANGEL
12.(What's so funny 'bout) Pease love and understanding (Brinsley Schwarz)
第二部
01.Just my imagination (The Temptations)
02.You better move on (Arthur Alexander)
03.SLIPPIN’ DOWN
04.Love hurts (The Everly Brothers)
05.MOVIN’ STRANGER
06.誰もが誰かに (山口冨士夫)
07.IT'S GONNA BE ALRIGHT
08.本牧ブルース (ザ・ゴールデン・カップス)
09.Donna (Ritchie Valens)
10.I'm talking about you (Chuck Berry)
11.Action woman (Electras)
12.クレイジー・クール・キャット (SHEENA & THE ROKKETS)
13.Midnight rambler (The Rolling Stones)
14.I'm a king bee (Slim Harpo)
15.TIME WAITS FOR NO ONE
16.君が君に (ひまわり)
E.C.1
01.トンネル抜けて (BO GUMBOS)
02.気ままな旅
E.C.2
01.It's all over now, baby blue (Bob Dylan)