前回は品種(ロブスタ種とアラビカ種)からくる価格差の話でしたね。

 

今回はちと切り口を変えて、コーヒーのカテゴリーによる価格の違いについて解説しようかと思います。

 

…とはいったものの、まずは「コーヒーのカテゴリー」ってなんやねん?って話から。

 

コーヒー豆には「スペシャルティコーヒー」「コモディティコーヒー」という大きな区分けがあります。

 

また、コモディティコーヒーの中にも「プレミアムコーヒー」「工業用コーヒー」といった品質基準や価格の異なる区分けが存在します。

 

今回は「スペシャルティコーヒー」「コモディティコーヒー」「プレミアムコーヒー」「工業用コーヒー」という4つのカテゴリーに分けてそれぞれの違いについて説明しつつ、価格差の違いについても解説していきます。

 

 

スペシャルティコーヒーとは

 

スペシャルティコーヒーは高品質で専門的な加工や栽培方法を用いて生産されたコーヒー豆で、生産過程のトレーサビリティ(追跡可能性)が高いという特徴があります。

 

価格の基準になるのはひとことで言ってしまえば「味の良し悪し」なんですが、単に甘みや酸味などのバランスが良いとか、後味が良いとかそういったことだけではありません。

 

どちらかというと複雑なコーヒーの風味のなかから濁りのない風味(クリーンカップ)をどれだけ感じられるかが加点のポイントになってきます。

 

SCA(スペシャルティコーヒー協会)ではフレーバーホイールという図を使ってこの風味特性を明示しています。

 

<出典:Specialty Coffee Association

 

例えばひと口に「フルーティ」と言っても、それは「ベリー」なのか「柑橘」なのか?ベリーであればそれは「ブルーベリー」なのか「ラズベリー」なのか?などなど、より細分化していきます。

 

我々がコーヒー豆を紹介する際に味覚表現(ブルーベリー、グレープフルーツ、グリーンアップルetc.)してるのを目にしたことがあると思いますが、その豆の持つ個性を重視しているのがスペシャルティコーヒーです。

 

専門の資格をもったカップテイスターがひとつずつ味見して採点し、おおよそ80点以上ついた豆がスペシャルティコーヒーと呼ばれます。

 

より個性的で風味の優れたコーヒー(いい意味で尖った味わいのコーヒー)が高い値段をつける傾向にあるため、生産農園や品種は混ざりっけのないものが多く、手間のかかる発酵処理を挟んだり、雑味の元となる欠点豆を生産者側で取り除いてたりして品質が高いコーヒーが多いです。

 

そういったトレーサビリティの高さが銘柄に直結するので、手間のかかっているコーヒーほど商品名が長かったりします。

 

 

(例)ブラジル/グアリロバ農園・トパージオ・ダブルファーメンテーション・ハニー

生産国名/〇〇農園(生産者名や生産地域など)・品種名・発酵工程や精製方法など

 

 

一般的にはこんな感じの命名方式になります。

 

 

人気農園のものや超高品質なものになると品評会に出品されたり、独自に競売されることもあるので、そういったものの価格は青天井なのもスペシャルティコーヒーの特徴かもしれませんね。

 

…当店では予算の都合上、そこまでのものは扱えません( ;´Д`)

 

一般的な評価のスペシャルティコーヒーの価格については当店のコーヒー価格を参考にしてもらえばいいとして、今回上げる4カテゴリの中ではもっとも平均相場が高いのがスペシャルティコーヒーになるかと思います。

 

スペシャルティコーヒーのデメリットとしては加工方法(嫌気性発酵処理やハニープロセスなど)による繊細な風味づけが実践されているため毎年同じ味にならないのが常で、供給量も多くないことから店の顔となるようなブレンドコーヒーには用いにくいといったことでしょうか。

 

恒常的に作り続けられている銘柄もありますが、基本的にはワンシーズンものの「一期一会のコーヒー」だと思ってもらった方がいいと思います。

 

 

 

コモディティコーヒーとは

 

コモディティコーヒーというのは、Commodity(訳:日用品)という言葉のとおり、大量生産された一般的なコーヒーを指します。

 

スペシャルティコーヒーとは違って味の良し悪しは評価の対象外で、生産国によって異なる基準にもとづいて等級(グレード)と価格が決まります。

 

コロンビアなら豆の大きさが評価の基準ですし、グアテマラやコスタリカなんかは生産地の標高、エチオピアは欠点豆の含有量…などなど、味とはあまり関係ないところで格付けされて価格が決まります。

 

国内で生産された豆を混ぜ合わせてしまうため、その土地ならではの味わい(テロワール)がでますが、どちらかというと安定した供給が強みの豆といえます。

 

なので、銘柄は比較的シンプルで、

 

 

(例)グアテマラSHB

生産国名+生産国ごとのグレード表記

 

といった感じになります。

 

たまにコンビニコーヒーなんかで「エチオピア産最高級グレード豆使用」とか書かれていたりしますけど、それはつまりコモディティコーヒーの最高級グレード(G1グレード)が30%以上使われているってことになります。

 

エチオピアの格付け基準は欠点豆の含有量なので、「エチオピア産のフルーティな香りがあって欠点豆による雑味が少なめなのね」とか推測できるわけです。

 

価格としてはスペシャルティコーヒーに比べると安価ではありますが、日本に入ってきてるコモディティコーヒーは比較的高グレードのものが多いので、ちゃんとしたお店だとそこまで大きな価格の差は感じないかもしれませんね。

 

ネットとかで激安な豆が売られていたら、コモディティコーヒーの低グレード品を疑ってみてもいいかもしれません。

 

 

 

プレミアムコーヒーとは

 

プレミアムコーヒーというのはコモディティコーヒーの中でも、ごく一部のブランディングされた特定地域で栽培され、厳格な基準に沿った豆を指します。

 

キリマンジャロとかマンデリン、モカ◯◯(ハラー、マタリetc.)、〇〇マウンテン(ブルー、クリスタルetc.)など、生産国名とは別に特定銘柄がつくものが多いですね。

 

 

(例)グアテマラ/SHB・アンティグア

生産国名+生産国ごとのグレード表記+特定銘柄

 

(例)キリマンジャロAA

特定銘柄+生産国ごとのグレード表記

 

 

喫茶店なんかだと特定銘柄がついたコーヒーは生産国名を省略するパターンが多いような気がします。(ブルマン、キリマンジャロ、マンデリンetc.)

 

なんとなくコーヒー通っぽいですし、山の名前とかついてるとイメージだけで美味しそうな気がしちゃいますからねww

 

ちなみに銘柄からはプレミアムコーヒーのように見えても、実はきちんとカッピング評価で80点以上を獲得したスペシャルティコーヒーなんてこともあります。

 

ここらへんの定義はちと曖昧というか、判断つきにくい部分もありますのでご注意ください。

 

プレミアムコーヒーはコモディティコーヒーの上位グレード的な位置付けなので、価格もコモディティコーヒーとスペシャルティコーヒーの間くらいのイメージですね。

 

味や品質が安定していて、供給量もそこそこ多いため、品質を重視した一段上のブレンドにも使いやすいコーヒー豆です。

 

 

工業用コーヒーとは

 

工業用コーヒーというのは上の3つと少し意味合いが異なり、生産国での区分けではなく、主に卸業者が飲食加工用にブレンドしたコーヒー豆を指します。

 

先に命名規則から紹介しちゃいますね。

 

(例)コーヒー

 

 

( ゚д゚)ポカーン

 

いやもう、命名規則もへったくれもないですな。

 

まぁ、「芳醇フルーティ」とか「コクの深煎り」みたいな補足説明的なサブタイトルくらいは付くかもしれませんけどね。

 

レストランとかホテルで提供されることが多いんですが、分かりやすく言うと、セットメニューなんかでついてくる「コーヒー」に使われてる豆ですよ。

 

中身としてはコモディティコーヒーなんですがグレードや品種は明示されておらず、中庸な味にブレンドされた良くも悪くもコーヒーらしいコーヒーです。

 

価格重視なのでブレンド前提なのはもちろん、前項で出てきたロブスタが混ざっていることもありますし、グレード低めの豆の割合が多ければ欠点豆が多く含まれることもあります。

 

…冷静に考えるとコンビニコーヒーもこれに当てはまるトコあるような気が(・_・;

 

 

ただまぁ、あまりウチみたいなコーヒー専門店が言うことでもないんですが、コーヒーというものにそれほどコダワリがなければ工業用コーヒーで良いような気もしちゃいます。

 

香料使ってる一部の缶コーヒーなんかよりは遥かに健全だと思いますよ( ´_ゝ`)

 

 

 

番外編(エキゾチックコーヒー)

 

4つのカテゴリに分けたものの、価格という点だけでいえばその枠に収まらない特殊なコーヒーも存在します。

 

 

有名なのはコピルアックとかブラックアイボリーみたいな…

 

 

俗に言うウ◯チコーヒーね(・ω・)b

 

…上品にエキゾチックコーヒーなんて言い方をします。

 

 

コピルアックはジャコウネコ、ブラックアイボリーはゾウによる生成物(要はウン◯)から採れるコーヒー豆ですね。

 

天然のコピルアクについては完熟したコーヒーの実のみを選んで食べるらしく、一応ジャコウネコチョイスによる厳選された豆(?)が体内発酵を経て独特の風味を持つってことみたいです。

 

正規のものは流通量が少ないため希少性から高値がついてますが、ニセモノも多く出回ってるようなので、もしネットとかで買う場合はご注意くださいまし。

 

ちなみに好奇心からか稀にウチにも問い合わせがあったりするんですが、基本的に扱う予定はありません。

 

 

まとめ

 

というわけで、今回はコーヒーのカテゴリ別に価格の違いを解説しました。

 

高いから良いとか、安いから悪いではなく、売る側の視点からするとそれぞれに使いどころが違うんですよね。(特にブレンド絡みとか)

 

お客様視点だと、自分のコダワリに応じてどの辺りのコーヒーがもっとも自分のスタイルに合っている、お財布の中身と相談しながらコーヒー豆を探してみるのがいいのではないでしょうか。

 

ちなみにコーヒー豆卸大手のUCCさんの公式オンラインストアのコーヒー豆カテゴリ金額順に並び替えると今回の4カテゴリの価格差というものがなんとなく見えてきます。

 

まぁ、最終的にはそれを踏まえたうえで、ウチで買ってもらえれば嬉しいんですがね( ´Д`)y━・~~

 

ではでは!