2021/06/30日本経済新聞『米長寿投信から個人マネー流出』より

 

運用歴の長い世界の著名投信から個人の資金が流出しているようです。株式投信の21/01月~05月の資金流出入を調べた調査では、流出上位は歴史ある米国のアクティブ投信が並び、個人投資家は低コストのインデックスファンドを選ぶ流れが鮮明になっているとあります。

 

モーニングスタダイレクトのデータを基に資金流出入を集計(クローズドエンド投信、純資産額30億ドル未満は除外)した結果、流出上位は「長寿投信」がランクイン。1967年設定のフィデリティ・コントラ・ファンドは著名FMのウィル・ダノフが運用(日本でもあります)し、純資産総額は1376億ドルと大きい。21年1-5月には113億ドルの流出超となっています。1934年設定のアメリカン・ファンズ・インベストメント・カンパニー・オブ・アメリカ(これはキャピタル社のですね)も1-5月に79億ドルの流出超となっています。

しかしながら、これらのファンドは運用成績が悪い訳ではありません。コントラファンドは過去10年の平均年間収益率は15.8%とS&P500の上昇率(14.4%)を上回ります。アメリカン・ファンズも21年1-5月の運用実績は12.4%とS&P500の上昇率(同11.9%)を上回っています。

 

2021/06/30日経新聞より

 

こうした長寿投信の多くは、ベンチマーク(指数)を上回るべく銘柄選択をして投資をするアクティブ運用であり、企業調査に手間がかかるため、残高に対する経費率(信託報酬)は指数連動型よりも高くなります。経費が高くても運用成績が指数を上回っていたとしても資金流出が続いていることを示しています。

 

個人投資家は多少の運用成績の差よりもコストに着目する傾向を強めているようです。流入首位はバンガード500インデックスで、資産の一部をETFで運用、またフィデリティ500インデックスファンドも経費率が非常に低い指数連動型ファンドです。指数連動型は純資産が巨額になってきて、資金の出入りも盛んになっているとのこと。(より経費率が低いファンドに投資家の資金が渡り歩いている感じを受けなくもないです…)

 

楽天証券のファンド専門家は「既存投信の費用見直しは容易ではなく、結果的に後発の低コストのインデックスファンドに個人の資金が移っていく」と指摘、「この10年余りの基本的な世界の株高によって個人はコストが安いインデックス投信でも十分利益が得られるという成功体験を得ている」とコメントが紹介されていました。

 

少し前のいろいろなところにも、「資産運用業界は昔の商品設計を変えることが難しいので、既に投資してもらっている顧客へに対してサービス向上が出来ていないではないか」みたいな論調がありますが、これはプロダクト乱造産業とも言える業界ではやむなしの構図です。

 

米国投資信託協会(ICI)によれば、投信の経費率は純資産加重ベースの平均では1996年に1.04%であったものが、2020年には0.5%にまで低下。投資家は特に購入時や解約時等の手数料が不要なノーロード型への資金シフトが進んでいるとも言っています。最近は米国でアクティブETFも盛んにローンチされていて、商品開発競争もかなり激しくなっている印象があり、投資家にとっての選択肢が増えるのは歓迎ですが、皆インデックス系というのはちょっと面白味が無くなっていしまいそうな。

 

私としてはヒトが見つけるストーリーがある銘柄が詰まったファンドも結構好きなんですけど…