2019/06/05 日本経済新聞 『FRB 強まる利下げ観測』より
FRBパウエル議長は4日、貿易戦争の激化懸念を示し「景気拡大を持続させるため適切に行動する」と述べています。この発言は市場で年内の利下げをほぼ織り込む動きとなって、夏以降の会合にて金融緩和スタンスに転じてゆくのか?FRBの動向がより注目されています。
この講演の骨子は「中国との貿易問題がどのように決着するかわからない」が「米国経済への影響度を注視し、雇用の力強さや2%のインフレ率をキープするために『適切に』行動するだろう」というものです。FRB内には「景気減速への『保険』として政策金利の引き下げが近く正当化される可能性がある」
※かなり周りクドイですが、米国経済減速へ念には念を入れての保守的な慎重論です。
こうした慎重論の主はセントルイス連銀のブラード氏で、金融政策を決めるFOMCでの投票権がある人物でもあることから、金利先物市場では一気に年内0.25利下げ可能性を98%で織り込む動き(ほぼ確実視)となっています。
実際のここまでの米国経済は、失業率は約50年ぶりの水準に低下、景気拡大期間もほぼ10年間と順調です。しかし先行き不安から、こうした景気減速懸念と慎重論が高まり、経済先行きを映す株価は上昇にブレーキがかかり始めていました。
米国景気は年後半に調整局面に入る可能性も出てきているが、まだ景気後退にはなっていない。そんな中での「予防的利下げ」という表現がフィットしそうです。この「景気拡大局面での利下げ」は以前にも似たような状況はありました。
1998年の米国は景気拡大中でしたが、アジア通貨危機での市場動揺に際して、FRBは同年秋の小規模の利下げ実施を通じて市場動揺を収拾、その後米国経済は3年近くの景気拡大局面を維持したというものです。今回もまた景気後退に入っていくのを待たず、「予防的利下げ」という先手先手を打って、徐々に金融緩和に移行していこうとする意図が見られます。
(以前ほどの更なる金利低下余地はないにせよ、、、)まだ利下げという切り札が残されている米国と、既に超低金利が長きに渡る日本や欧州という主要中央銀行の金融緩和策が、世界の株式市場や為替市場に波及する影響をより注視すべき局面です。
本来の中央銀行がカバーすべき命題は「物価の安定」、「雇用の最大化」の2つです。これほどまでに米国の金利政策に世界から注目が集まる状況は、世界で経済大国一強体制となりつつあるが故であり、その動向がグローバル経済全体に波及する可能性があるという点では、98年アジア通貨・ロシア危機、2008年リーマンショックに始まる金融危機時のデジャヴを連想されます。