僕がインプロに関心を持ったキッカケは、ファシリテーターCさんの「演劇ワークショップ」を受けたこと。ロジカルにプログラムを作り込むのが当たり前だと思っていた当時の僕には、流れに任せながら、即興で見事に場を作り上げていく光景に、鳥肌モノの感動だった。



今回友人のSさんが、インプロの権威Tさんを関西に招聘するということで、頭よりも先に指がタイプしていた。とは言え、「インプロ」の言葉のみに反応して、何をやるかもしっかり確認せず申し込む自分もたいがいだが、Sさんの告知ページもプログラムについて何の説明もない。確かにTさんのネームバリューで人は集まるとは言え、多忙なSさんがサボっていたのか。。



ワークショップが始まるが、Tさんは話しながらも参加者を観察し、どうしたものか思案されているようだった。何とその場で何をするか、考えながらファシっておられるらしい。インプロはimprovisation の略で、語源は「前もって見ることをしない」。だからと言って、ホンマにその場でその日にすることを考えるとは。。Sさん疑ってゴメンナサイ!



当日したことは、以下の内容。説明しないと、なんのこっちゃわからないことも多いと思うけど、個別の詳細は省略します。すみません。

・ストレッチ

・がんばらない腕

・コンタクトインプロヴィゼーション

・手のダンス

・まほうの箱

・次何しますか

・イルカの調教

・からだからのメッセージ

・ステータス

・同じ理由で出る



特に印象に残った学びのひとつが、「ステータス」という考え方だった。日頃から、この場は下手に出た方がいい、堂々としていないとなめられるなど、出方を意識することがあるが、それらをロールプレイを通して理論的に説明して頂いたことが、すごく腹に落ちた。「ファシリテーターはステータスを乱高下させる必要があります」という言葉は僕にとって金言だったし、「自分を触るとステータスが下がる」、「カウンセリングでは対等のステータスを作るために、ミラーリングというテクニックを使う」など実践的な学びが得られた。



あと、「ルールがあるとやりやすい。でもそのあとはルールがじゃまになる」という言葉も印象に残った。Tさんは、体感ワークショップでモワーンとわかった気になって感動している時に、的確に心理学などに基づいたアカデミックで理論的な解説を加えてくれ、すごく勉強になる。



最後に、4名一組で、「同じ理由で出る」即興演劇をした。4名が出て後は観客、4名が一緒にその場から走り去るという即興劇をやった。例えば誰かが「あっ火事だ!」と言えば、一斉に走って逃げる。それを参加者が立候補制で代わる代わるやる。ただ、ありきたりのことが続くと飽きてくるし、かと言って少しウケ狙いに走っても、それがハイブロー過ぎると、ついてきてくれない人が出てくる。



僕のチームは、ウケ狙いがドツボにハマって、誰かが何かを言っても全員走らないことが何回か続いた。僕は「もう全員いっぱいいっぱいですから、交代してください。すみません!」と言いながら、舞台からひっこもうとした時、Tさんが「今起きたのが奇跡です!」と言われた。



最初何のことかわからなかったが、要は計算して行ったことではなく、流れの中で自然に出た言動で、劇に変化を与えることを「奇跡」というみたい。ここから一気にハードルが上がり、「奇跡を起こして4人が舞台から脱出しよう」というお題になる。



そこでTさんからヒントが。「舞台では、数秒沈黙があると、とてつも長く居心地悪く感じるかも知れないが、観客は待ってくれます。だから、沈黙を恐れず待つこと、そして相手を観察すること。そこから活路が生まれます」



僕もチャレンジしてみたが、すごく難しい。それでお互い観察しあいながら、しびれをきらした人が、ホッペをポリポリ掻くなどの動作を真似しあう。それが発展し、何故か全員で押しくら饅頭のようなタックル合戦になった。どうなるやらと思いながらも、やってるとバカバカしくもケラケラ笑いながら楽しくなる。



その時、突然メンバーの携帯電話が地面に落ち、衝撃で電池カバーが外れてしまう。これって頭が考える間もなく、チャンスだと全身に命令を下す。奪い合うようにメンバーが携帯に群がり拾いあげると、口々に「誰か修理をー!」と叫びながら走って退場。奇跡が起きたのだった。この高揚感はやった人にしかわからないかなぁ。。



こういうワークショップには、「何に活かせるんですか?」のツッコミは必ずあると思う。Tさんは、「演劇が扱うのは変化です。日常って普通は変化が少ない。だから人間は演劇を通じて変化に備えることができる。今仕事とかあらゆる場で変化が日常になりつつあるから、演劇的要素が求められているのではないか」と説明された。



確かに、ファシリテーターとして、「奇跡」を演出できるようになれれば。。ハードルは高いけどチャレンジしてみたい目標ができたような気がした。



Every cloud has a silver lining