刑務所からの手紙 -2ページ目

刑務所からの手紙

「ご主人は今、警察に居ます」連絡が取れなくなって6時間・・・鳴った電話は二度と掛けて欲しくない人からの電話だった。

ゴールデンウィークが明けての第一日目。

通勤に向かう道路は、GW中によく見かけた県外ナンバーの車も一気に姿を消して
休み前のいつもの交通量に戻っていた。

時々見つける県外ナンバーに『まだ、GWの人もいるんだなぁ・・・いいなぁ』なんて、横目で見ながら
少し、GW中にYouに逢う時間が取れなかったもどかしさを感じていた。


いつもより少し早く店に着いた私は、いつものように店のカーテンを開けて、電気を付けて、掃除に取り掛かる。
一通り開店の準備ができた所で、事務所の机に座り、携帯に目をやった。


『いつもは、メール来るのに・・・今日はこないな。仕事始めでYouも忙しいのかな』


そんな軽い気持ちで、メールを打った。



普通のメール 『今から仕事始めるね。そっちは忙しい?』


一時間待って、返事がない。
Youの仕事は、土木業。手が汚れてたり、忙しかったりするとメールの返事が遅れることもある。



11時になった。
もう、いい加減おかしいな。


普通のメール 『事故にあったりしてないよね?大丈夫?』


10分後

普通のメール 『大丈夫だよ。 ごめんね』



なんで謝るの?そんなちょっとしたこと、いつもは気にしないのに、なんでだろう。。。
胸がざわめいて仕方がない。


何度も何度もメールした。電話も。
電話を掛け続けて、一時間位すると電源が切れたアナウンスが流れる。


なんで?なんで?なんかあった?まさか・・・


私の頭の中で、去年の事件が繰り返し繰り返し流れた。
そんな事あるはずない。
頭が混乱するのをかき消すように、自分で自分に呪文の様に 大丈夫 と言い聞かせた。



15時07分。
携帯の着信が鳴った。


誰だろう。。知らない番号。



無愛想に はい と出た私に聞こえてきた声は、聞き覚えのある声だった。


去年、Youを逮捕して本当に心配してくれていた刑事Oさん。
警察の番号全部メモリーに入れてたのに。


『奥さんですか?ご主人は、今警察に居ます。』
『心配してるといけないから、本当はいけないんだけど・・・自分個人の携帯から掛けてます。詳しい事はいえないけど・・・去年の事です。』


電話はそれだけ伝えると慌てる様に切れた。



なんで?去年のこと?なにか他にもしてたの?わからない・・・

居てもたっても居られず、私は店を早めに切り上げて警察へ向かった。




一年ぶりに足を踏み入れた警察署。
去年は、警察署に入ることも怖くて(別に私が悪いことした訳じゃないけど)罪悪感に苛まれてた。
無機質なコンクリートの建物は古くて冷たい気持ちにさせる所はまったく変わってなかった。

少し暗い階段を上って、二階の刑事課へ。
開けっ放しのドアから、少し顔を見せて すみません と声を掛ける。

普通なら、ここが刑事課なんて知ることもないんだろうな。
そんな事を思いながら、廊下を挟んで反対側にある小さな部屋の列に目をやった。


5~6メートルの短い廊下の中に、3つ。
ドアには小さな窓がついていて、それを隠すように小さなカーテンが閉まってる。
取調室。


きっと Youはここにいる。

どうなってるの なんでこうなったの。
怒鳴り込んで、押さえつけられても聞いてやろうか? そんな思いで一歩 足を踏み出した。



『お待たせしました。奥さん お久しぶりです』

背後から掛けられた声に 思わず体がビクッと反応する。
あ・・・私、今とんでもない事しようとしてた。(公務執行妨害・・・?)
我に返った自分に、しっかりしなきゃ と言い聞かせて声のした方へ振り返る。


去年、Youの担当をしてくれたO刑事さん。
Youと年が同じで、子供の歳も同じ。ただそれだけで、本当に私たち家族のことを心配してくれた人。
話を聞きたくて来た事を悟ってくれたのか、彼は言葉を選びながら説明を始めた。




今朝、窃盗の通報があって犯人の車を探していたらYouの車だったこと
逮捕前だけど本人が私に連絡を取れないと心配してたので、自分が変わりに他の刑事さんには内緒で電話してきてくれたこと
(本当は、逮捕後にしか家族への連絡はできないとか・・・)
夕方には逮捕状が出て、逮捕されること

私に言ってた仕事はしてなくて、ずっとハローワークや就職活動を行なっていたこと
それを言えなくて また窃盗を犯したということ
去年の事と、O刑事さんが電話でうそをついたのは 私へのショックを考えて本当の事言えなかったということ



目の前が真っ暗になるって、こうゆう事なんだ。全身の力が抜けて 涙すら流すこと出来なかった。



私のせいだ。
ただ、それだけ頭の中にぐるぐると回ってた。



それから、O刑事さんにいくつかの言葉を掛けてもらったけど、どうやって警察から家へ帰ったのかすら覚えていない。
ただ 帰ったら何も知らない子供が おかえり と声を掛けてくれたのを皮切りに涙が止め処なくあふれてきた。

私の愛する人は、犯罪者です。


この日記は、多くの人に嫌な思いをさせてしまうかもしれません。
普通に暮らしていれば何の関わりもない事…知らなくていい世界なのかも知れません。
どうか、こんな世界を知らずに平穏な生活を送っていらっしゃる方・知りたくない方は中をみらずに通り過ぎてください。

でも、被害者の方々・本人・警察の方。そして、犯罪を犯した人を愛し、帰りを待つ人々が存在するのも事実です。


私の愛する人は、窃盗という罪を犯しました。
多くの被害者の方の上に、私たちの嘘の生活があった事。
多くの方に迷惑を掛け続けた事。
それは、何度悔やんでも悔やみきれません。


ただ、そんな犯罪者でもたった一人でも幸せな気持ちにさせてくれる事もあるんだという事。
犯罪を犯し、逮捕される人の数より遥かに多くの数だけ
その人の更正を願い、帰りを待ち続けている人がいるという事。
その現実を身をもって知ったとき、私は自分が知らなかった世界へ入り込んでしまったと何とも言葉に表せない気持ちで一杯でした。

人として全うに生きれる様になって欲しい。
その為に小さなことでも沢山の記録を残したい。
そんな自分勝手なブログです。

今、この瞬間に愛する人を想って待ち続ける人。
服役を終わり、更正の道を歩んでいる人。
犯罪に合い苦しんでいる被害者の方々。。
時間が全てを解決してくれるという簡単な問題ではありません。

でも

もし、許されるのなら彼が立ち直るために精一杯の努力をしたいと願うばかりです。


最後にもう一度。。
ブログの中には、一般では聞かない数多くの言葉が出てくると思います。
お読みになっていて、不快な気分にさせてしまう場面もあると思います。
本当に本当に自分勝手で申し訳ないのですが、ご理解頂けない方はどうか見なかった事にして通り過ぎてください。