ソレイシィ と ブラッドベリ
数多くの英会話指南書の著者として知られるスティーブ・ソレイシィは、現在NHKラジオ第2の「英会話タイムトライアル」の講師を務めている。
月~金の帯番組で、1回たった10分の講座。とにかく英語を口に出してみることに主眼をおいたプログラムだが、昔ながらの定型的な会話表現ばかりでなく、コロナ時代の入国審査とか、旬な話題も積極的に取り入れているところがうれしい。
10月はデジタル時代の会話表現がテーマ。たとえば、「Wi-Fi に接続できましたか?」は、Were you able to connect to the Wi-Fi? といえばいいとわかるが、そこに、日本語の「できましたか?」に引きずられて、Could you connect to the Wi-Fi? とすると、相手に「接続していただけませんか」と依頼しているように聞こえかねないので、ここは be able to を過去形にして用いるのがおすすめであると言い添えるあたりが彼の持ち味なのだろう。
10月DAY03(09月28日放送分)では、メルアドやパスワードを口頭で伝える際の表現などを学んだ。
「大文字」は(capital letter と言ってもいいのだけれど) upper case がおすすめで、「小文字」は lower case。「K は大文字です。そのほかは小文字です」なら、The 'k' is upper case. The rest is lower case. でOKらしい。
その流れから、口頭で個々のアルファベットを確実に伝える方法として、“It's ・ a ~ z ・ as in・それを頭文字に含む英単語” の表現を教えてくれる。たとえば、「elephant の e です」なら、It's 'e' as in elephant. といった具合である。まあ、特殊な分野では、Alfa、Bravo、Charlie、Echo といった決まった単語が用いられるのだろうが。
◆ 通信コードとしての Charlie
それで思い出したのが、SF作家レイ・ブラッドベリの短編集のことだ。
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その昔、中学校で英語を習い始めてから、私は英米の翻訳小説(主にSF)の原題を少しずつ注意して見るようになった。
前にも書いたことがあると思うけれど、たとえば、当時書店でよく見かけたロバート・A・ハインラインの初期短編集『月を売った男』の原題は、The Man who Sold the Moon で、この who は、私が教科書以外で目撃した最初の関係代名詞となった。(^^;
それ以降私が見かけた翻訳もののタイトルも、形容詞+名詞とか、せいぜい、映画「アラバマ物語」の原作、To Kill a Mokingbird のようなフレーズどまりのものが大半で、フルセンテンスの形はなかったように思う。
それだけに、レイ・ブラッドベリの2冊の短編集、『ウは宇宙船のウ』(R Is for Rocket)と、『スは宇宙(スペース)のス』(S Is for Space)に出会ったときに受けたインパクトはかなりのもので、この原題のパターン( X is for x..... )はすぐ私の頭のなかに刷り込まれてしまった! もっとも、2冊の邦題を取り違えることは多かったのだが……(^^;
というわけで、「英会話タイムトライアル」に “It's 'e' as in elephant.” が登場したとき、「この場合、“It's 'e' for elephant.” とは言わないのだろうか」と私が疑問に思ったのも当然だろう。
しかし、さすがはソレイシィ講師! ちゃんと、「as in のかわりに、like あるいは for というのも正解ですが、どちらかというと、as in のほうが一般的です」と補足説明してくれたのだった!
もしかして、E is for elephant. には、どこか子どもっぽいニュアンスが感じられるとでもいうことなのだろうか? いつか英語母語話者に確認してみなくては。メモメモ...... φ(..)
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この番組、時間は短いけれどなかなか侮れないものがあって、「ボキャブライダー」とともに、今年の春からずっと聴き続けているのだ!
◆ 「ボキャブライダー」?