「夜来たる」重箱の隅 ②:引用内容の不一致 | DVD放浪記

「夜来たる」重箱の隅 ②:引用内容の不一致

 

自身の短編「夜来たる」(Nightfall)にアシモフが付した序文中に次のような一節がある。

【注】以下の日本語訳は、断りのないかぎり、すべて美濃透『夜来たる』(早川書房1986年刊)から採られている。

 

 そんな時、アスタウンディング・サイエンス・フィクション誌の編集長をつとめていたジョン・W・キャンベル・ジュニアが〝夜来たりなば……〟で始まるエマーソンの詩の一節をわたしに見せ、これをどう思うかと尋ねた。わたしは、かれと議論したあと家に帰り、二、三週間かけてこの短篇を書きあげた。

 

そのエマーソンの文章は以下のようなもので、本編に先立つ冒頭に掲げられている(ここ以外にエマーソンに言及した箇所はない)。

 

もし星が千年に一度、一夜のみ輝くとするならば、人々はいかにして神を信じ、崇拝し、幾世代にもわたって神の都の記憶を保ち続ければよいのだろうか。 

 

エマーソン

 

私がおやと思ったのが、「〝夜来たりなば……〟で始まるエマーソンの詩の一節」の部分だ。

 

まず、エマーソンの文章に対応させるなら、「〝もし星が千年に一度、一夜のみ輝くとするならば……〟で始まるエマーソンの詩の一節」としなくていいのだろうか? すぐあとに控える小説冒頭とかぶるので避けたというのだろうか? そうだとしても、「〝夜来たりなば……〟で始まるエマーソンの詩の一節」とする神経がわからない。気のきいた冗談のつもりなのか?

 

アシモフが自身のエッセイのなかにジョークを盛り込むことはよく知られている。平気でひどい駄洒落を披露してみせることもある。だから、英国詩人シェリーの詩句と自分の作品タイトル(Nightfall)を掛け合わせてみたということなのだろうか?

 

私は、この箇所に対応する英文を読んでみた……(^^;

 

 

※ ※ ※

 

 

「冬来たりなば春遠からじ」 というフレーズは、英国の詩人シェリーの「西風に寄せる頌(しょう)歌」Ode to the West Wind )という詩の一節、If Winter comes, can Spring be far behind ? の訳であるという。

 

「夜来たりなば……朝遠からじ」と、そっとつぶやいてみるワ・タ・シ。 (^^;