テセウスの船 | DVD放浪記

テセウスの船

テレビドラマ化されて話題になった、東元俊哉のコミック『テセウスの船』の冒頭には以下のことばが掲げられている。

 

 

 

 

 

「テセウスの船」とはパラドックスのひとつである。

 

その昔ーー

クレタ島から帰還した

英雄・テセウスの船を

後世に残すため

修復作業が行われた

 

古くなって

朽ちた部品を

徐々に新しい部品に

交換していくうちに

当初の部品は

全てなくなった

 

ここで矛盾(パラドックス)が

生じる……

 

この船は

最初の船と

同じといえるのか?

 

これが

人間だったら

どうだろう

 

 

 

西森マリー『ギリシア・ローマ神話を知れば英語はもっと上達する』にも「Theseusu テセウス(ティスィアス)」の項が設けられている。

 

 

 

 

 

「ある物の構成要素のすべてが置き換えられたとき、その物体は(オリジナルのものと)同じだと言えるだろうか」という疑問を提示したギリシアの歴史家、プルタルコスや、「もともと使われていた古い材木を集めて船を造った場合、その船はテセウスの船と呼べるのか? その船と、新しい材木に置き換えたられた船のどちらが(テセウスの帰還に使われた船と)同じ船と言えるのか?」と問うたトーマス・ホブズらに言及したうえで、彼女はこう言い添えている。

 

 これは the Ship of Theseus/Theseus's paradox「テセウスの船/テセウスのパラドックス」と呼ばれ、大学の哲学のクラスのみならず、日常会話でもよく引用されて、ブラック・サバス、シカゴ、フォーリナーなど、メンバー・チェンジを続けながら何十年も続いているロックバンドの話をするときなどにも引き合いに出されています。

 ちなみに、2011年のアメリカ映画『インモータルズーー神々の戦い』は、テセウスが主役です。

 

 

 

そして、用例として、ペニシリンの発見者フレミングの姪が保管していたカビが1万5000ドルで競り落とされたニュースを伝える、2017年3月2日付けの「ポピュラー・サイエンス」誌の記事からの英文を紹介している。

オリジナル記事はここに

 

Fleming made so many of these souvenirs that it's not clear how many were from the original sample and how many were just derived from the original. It's like Theseus' ship, but for fungus.

 

フレミングはこのようなおみやげをたくさん作っていたので、そのうちのいくつがオリジナルのサンプルで、いくつがオリジナルから派生したものかわからない。ティスィアスの船のカビ・バージョンのようなものだ。

 

 

本書中で紹介される英文用例の出典情報を見ていくと、著者がなみの英語教師などよりはるかに多種多様な英文に接しているだろうことが窺えるものばかりである。

 

彼女は、この項を以下のように締めくくっている。

 

*東京国際映画祭にも出品された2012年のインド映画、Ship of Theseus『テセウスの船』は、角膜移植、腎臓移植、臓器提供をテーマにした感動作です。元ネタを知っていると、このタイトルに深くうなずけるでしょう。

 

 

◆ テセウスの船 - 第25回東京国際映画祭