バナールでござーる
某所にてに見積もり依頼。通常とは条件が大きく異なることは両者納得のうえ。9日、10日の2日がかりで決行予定となる。
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J・D・バナールの『宇宙・肉体・悪魔』というタイトルを初めて目にしたのは、大学に入りたてのころだったろうか。例によって、脳天気な私は中身を見もせずに、漠然とした印象だけで「ふん、エクソシストものかよ」と勝手に決めつけていたわけだ。 (^^;
それでも、大学1年生のときの選択科目「科学概論」(だったかな?)の参考図書のなかに、バナールの『歴史における科学』(みすず書房)があり、また、生協が新入生用に編集したガイドブックにもそれが、自然科学分野の必読書のひとつとして挙げられていたこともあったので、さすがにバナールはけっこうまじめな学者なんだと、遅まきながら認識を改めたものだった。
もっとも、当時でもみすず書房の本は、少なくとも私にとっては高額商品だったので、私は岩波新書のなかにあった、アーミテージの『太陽よ、汝は動かずーコペルニクスの世界』とか、バターフィールドの『近代科学の歩み』あたりをちょこちょこっと読んでやりすごしていた。
それから幾星霜を経たことか。私は結局『歴史における科学』はもちろん、『宇宙・肉体・悪魔』も読む機会のないまま今日まできてしまったわけだが、後者の内容をそこかしこから漏れ聞くうちに、これはいつか読まねばなるまいと自らの宿題のひとつに数えていたのだった。
その『宇宙・肉体・悪魔』の新版がみすず書房から出たことを知り、罪滅ぼしのつもりで先日購入したわけだが、これにはほんとうに仰天してしまった。今日のSFが取り上げるテーマのほとんど(とめぼしいギミック)を、ひとりで先取りしてしまっているのだ。 (^^;
といってもピンとこないかもしれないが……たとえば、宇宙への進出については、古典的なロケットを用いる方法の説明に続けて、別の方法の可能性について以下のように記しているのだ!
それは風の代わりに太陽光線の輻射圧の斥力を利用する方法である。宇宙船は何エーカーもの広さの金属性の翼をいっぱいに広げれば、冥王星の軌道まで吹き流されることができよう。したがって帆を操って風上へジグザグに進めば重力場をさかのぼることができ、そして太陽を通り過ぎたら再び帆を拡げて全帆走することができる。
『宇宙・肉体・悪魔』 鎮目恭夫訳 第二章 宇宙 19ページ
ちなみに、本書が刊行されたのは1929年。(@@; ほぼ1世紀前のことである。