soap opera の由来新説登場? | DVD放浪記

soap opera の由来新説登場?

CG版の映画「キャプテンハーロック」が公開中だ。
◆「キャプテンハーロック」公式サイト

で、その映画のことではなく、秋田書店から出ている文庫版『宇宙海賊キャプテンハーロック』(全3巻)のほうのお話。その2巻目の解説中で、豊田有恒氏がこの作品を「日本版スペース・オペラの大傑作だ」と持ち上げ、その“スペース・オペラ”という呼称についてこう説明を加えていた。


 なんで、そんなところに、オペラという名がついたのかというと、もともと、アメリカには、ソープ・オペラというものがあった。十九世紀のころ、西部劇の時代である。西部の田舎町へ劇団が、巡業にやってくる。ところが、ちゃんとした劇場がないから、石鹸の木箱をならべて、舞台がわりにしたらしい。石鹸の箱の上で、踊ったりしたから、ソープ・オペラなのだそうだ。
 そうした伝説を踏まえて、西部劇が誕生した時、ホース・オペラと呼ばれたのだそうだ。つまり、馬が主役だからだろう。もちろん、これは、堅苦しい話は抜きで、楽しくなければいけない。
 二十世紀になって、SFのはしりみたいな宇宙活劇が、書かれるようになった。これが、スペース・オペラなのだ。

『宇宙海賊キャプテンハーロック(2)』(秋田文庫 354ページ)


えーっと、ソープ・オペラって、そういう話だったっけ? (^^;

soap opera の由来は、1930年代のアメリカで主婦向けに放送された昼メロドラマのスポンサーの多くが石鹸会社だったからというのが通説では? うーん、記憶違い、勘違いというのはだれにもあるし、豊田氏も時にちょっと大雑把なところがあるしなあ。
◆『ミクロの決死圏』の誤解
◆世の中には“最悪のタイミング”というものがある

もちろん、「彼女は二挺拳銃」のような映画にも描かれているように、西部開拓時代に地方をドサ回りする劇団はあっただろうし、臨機応変に木箱を並べて舞台に見立てることもあっただろうけれど、豊田氏の解説は、政治家が遊説先で石鹸箱(日本ならミカン箱か)の上に立って演説をぶって回ったという話が混入してしまったのではないかという気がしないでもない。あるいは、豊田氏が読んだ資料のなかに、西部開拓時代の巡業劇団のエピソードが紹介され、“これぞ正真正銘の soap opera だ!”なんてコメントがあったという感じだろうか。

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この、soap opera の石鹸会社スポンサー由来説は、現在たいていの英和辞典、英英辞典に記されているところだが、ドサ回り劇団由来説もあるということなら、その情報の出所をぜひとも知りたいところだ。

※ ※ ※

このスペース・オペラというのは、今日でこそ「スター・ウォーズ」などに代表される宇宙冒険ものを指す一般的な呼称になっているけれど、もとをたどると、アメリカSF草創期に粗製濫造された荒唐無稽な作品群を揶揄する、蔑称に近いニュアンスで用いられたフレーズだったらしい。

それらの多くは、西部劇の舞台を安直に宇宙に置き換え、拳銃ならぬ光線銃を手にしたヒーローが活躍するようなお手軽な勧善懲悪物語で、安手のウェスタンが horse opera と呼ばれていたのをもじって space opera と名付けられたともいわれている。そして、そうした物語に敵役として登場し、美女を脅かすグロテスクなモンスターのことを、Bug-Eyed-Monster(略してBEM=“ベム”)と呼ぶようになった。

なあんてことは、私が中学生になりたての頃に何度も読み返した、福島正実編集の『SF入門』からの受け売りだ。うーん、大昔の話だなあ。 (^^;

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