影なき狙撃者
"The Manchurian Candidate" というタイトルを最初に見たとき、「満州事変の話をシナトラ主演で描いた映画なのか?」とボケをかましていた私だが、故あってこの「影なき狙撃者」(1962年)を久しぶりに観直してみた。
朝鮮戦争下、マーコ大尉(フランク・シナトラ)率いる小隊は、敵の待ち伏せにあい全員が捕虜となる。特別施設で洗脳教育を受けた彼らは、全滅の危機に瀕した小隊が、レイモンド・ショー(ローレンス・ハーヴェイ)ひとりの獅子奮迅の活躍で窮地を脱することができたという記憶を植えつけられる。その結果、帰国後ショーは栄えある勲章を授けられ一躍時の人となる。
レイモンド・ショーの父親は上院議員で有力な次期副大統領候補だったが、実は、妻(アンジェラ・ランズベリー)に操られる人形にすぎなかった。レイモンド・ショーは相変わらず自分を支配しようとする母親を嫌って自立の道を模索しようとする。
いっぽう、マーコは帰国後情報部に勤務するが、毎夜悪夢にうなされるようになる。実は彼の仲間も同様の悩みをかかえていることを知ったマーコは調査を重ね、実は、その夢こそが共産軍側に捕らえられた小隊全員が受けた洗脳の実態を映し出すものだということ、レイモンド・ショーがその洗脳の結果作られた英雄であること、そして、共産勢力が彼を操ることでアメリカ支配をもくろんでいることを突き止めるが……。
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初めて観る人の興を削ぎたくないので、ここまでにしておくが、ある種のトリガー(この場合はダイヤのクイーンを見せること)によって、命令に絶対服従する人間を生み出せるということを観客がどこまで信じられるかが、この映画の成否を決める一番のポイントとなるだろう。この点にリアリティを感じることができなければあとはマンガにすぎない(いや、別にマンガを貶めているわけではないのだが)。
たしか、第2回日本推理サスペンス大賞を受賞した、宮部みゆきの『魔術はささやく』(1989年)にも似たようなギミックが用いられていて、当時の選考委員のひとりだった佐野洋は、その実現可能性に疑問を呈していたように記憶している。
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私も、どちらかというと懐疑派のひとりだったのだが、あるテレビ番組を見てから考えが一変してしまった。それについては、また明日。
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影なき狙撃者
The Manchurian Candidate
1962年 モノクロ 126分
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◆スタッフ
監督:ジョン・フランケンハイマー
製作:ジョン・フランケンハイマー/ジョージ・アクセルロッド
製作総指揮:ハワード・W・コッチ
脚本:ジョージ・アクセルロッド
原作:リチャード・コンドン
撮影:ライオネル・リンドン
音楽:デヴィッド・アムラム
◆キャスト
マーコ:フランク・シナトラ
レイモンド・ショー:ローレンス・ハーヴェイ
レイモンド・ショーの母親:アンジェラ・ランズベリー
ロージー:ジャネット・リー
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