「タイム・トンネル」の「タイタニックの最期」 | DVD放浪記

「タイム・トンネル」の「タイタニックの最期」

 

 

昨日も触れたアーウィン・アレンは、限られた制作費を節約するために、過去の映画からストック映像を流用することに長けていたというエピソードが伝えられていて、なるほど、そう言われてみればと、今になって思い当たるのが、NHKで放映していた「タイム・トンネル」である。

 

「タイム・トンネル」は、アリゾナ砂漠(だったかな?)の地下数千メートルの場所にアメリカ政府が極秘裏に建設中の(トンネル状の!)タイム・マシンなのだが、莫大な資金が投入され完成までもうひと息というところで、プロジェクトは打ち切り寸前の状態にあった。そこへ、この計画の存続に大きな影響力を持つ議会のお偉方が見学に訪れる。この時をおいてアピールの機会はないと考えたひとりの科学者が、無謀にも未完成のタイム・トンネルに飛び込んでしまう。その結果、彼は無事に過去へとたどり着くが、そこは、なんと運命の航海を続けるタイタニック号だった! 科学者は早速氷山との衝突を避けるよう皆に説いてまわるのだが、誰もが彼のことを狂人扱いして取りあわない。そうするうちにも、船は刻一刻と氷山に近づいていく……。

 

というのが、私の記憶の中にある第1話のあらすじ(間違っているかも)。さすがにシリーズの最初だけあって、このエピソードはよくできていたと思う。

 

以後、時の放浪者となった(都合ふたりの)科学者らを「現在」に連れ戻すため,に、「タイム・トンネル」のスタッフは懸命の努力を続けるのだが、窮地に陥ったふたりを他の時空へ転送するのが精一杯で、しかもその行き先を事前には特定することができない。結果、ふたりはあてどなく時間の中をさまよい続けることになる。もちろん、毎週(実に都合よく!)歴史上の重要事件の真っ只中に置かれるというわけだ。

 

そうした歴史的事件を映像の形で見せるとなると、どうしても大掛かりになり、単独のテレビシリーズの予算でまかないきれるものでないことは容易に想像できる。実際、番組の間に挿入されるスペクタクル場面は、他の映画で撮影されたフィルムの未使用分から流用されたものだったのだ。

 

あれから40年近くたって、その「タイム・トンネル」第1話の中で使用された映像の元ネタの映画をこの目で観ることができるようになるとは!

 

 

「百万長者と結婚する方法」や「愛の泉」のジーン・ネグレスコ監督が手がけたこの「タイタニックの最期」(1953年)には、クリフトン・ウェッブ、バーバラ・スタンウィック、ロバート・ワグナー(若い!)、リチャード・ベースハート(映画「白鯨」などに出演し、TV番組「原子力潜水艦シービュー号」ではネルソン提督を演じた)、名脇役のセルマ・リッターらが出演していて、当時としてはなかなかの力作といっていいだろう。

 

「SOSタイタニック」(1958年)や、ご存知ジェームズ・キャメロン監督の「タイタニック」(1997年)の陰に隠れて忘れられた存在のようになっているが、ウェッブとスタンウィック、ふたりの芸達者が演じる、関係の冷え切った夫婦が最後の最後に愛を取り戻す部分はやや安直ではあるものの、なかなかメロドラマチックで私の好みではある。アル中の元神父を演じるベースハートや、ポーカーに興じるリッターの有閑マダムぶりも悪くない。

 

こうした虚実をほどよく混ぜ合わせた手腕が評価されたためかどうかは知らないが、この作品は、1953年のアカデミー脚本賞を獲得している。DVDに収録された特典映像、「神話となったタイタニック」も、この種のものとしてはなかなか見ごたえのあるドキュメンタリーで、機会があれば、一度見ておいて損はないだろう。
 


タイタニックの最期

Titanic

 

1953年 白黒 98分


◆スタッフ

監督: ジーン・ネグレスコ  
製作: チャールズ・ブラケット  
脚本: チャールズ・ブラケット  
 リチャード・ブリーン  
 ウォルター・ライシュ  
撮影: ジョー・マクドナルド  
特撮: レイ・ケロッグ  
音楽監督: ライオネル・ニューマン  
音楽: ソル・カプラン 
 

◆キャスト
リチャード・スタージェス:クリフトン・ウェッブ  
ジュリア・スタージェス:バーバラ・スタンウィック  
ギフォード・ロジャーズ:ロバート・ワグナー  
アネット・スタージェス:オードリー・ダルトン

ジョージ・ヒーリー:リチャード・ベースハート  
モード・ヤング:セルマ・リッター  
スミス艦長:ブライアン・エイハーン