ベン・アフレックを見るたびに僕は「わあ、かっこいいなあ」と思うが妻は「ケツアゴだなあ」と思うらしい。お陰で妻の中では「ケツアゴの人」というあだ名がついたらしく、「あのケツアゴの人の映画ってなんだっけ?」というアーロン・エッカートのような他のケツアゴに申し訳ない会話が我が家では繰り広げられるのだった。
今日はそんなベン・ケツアゴ・アフレックの『ザ・コンサルタント』の話です。

 

 

 


【あらすじ】
「アルゴ」のベン・アフレックが、凄腕の殺し屋の顔を持つ謎の会計士を演じたサスペンスアクション。田舎町のしがない会計士クリスチャン・ウルフには、世界中の危険人物の裏帳簿を仕切り、年収10億円を稼ぎ出す命中率100%のスナイパーというもう一つの顔があった。そんなウルフにある日、大企業からの財務調査の依頼が舞い込んだ。ウルフは重大な不正を見つけるが、その依頼はなぜか一方的に打ち切られ、その日からウルフは何者かに命を狙われるようになる。(映画.comより)


本作、単なるアクション映画ではない。主人公がアスペルガー症候群を患っているという障害者映画でもある。
通常、障害者映画(邦画)では「愛情」とか「友情」とかで障害を認めた上で「障害も個性のひとつだよね」という手垢の着いた理想論で終わることがある。
障害者の役もイケメンが演じることが多い。『サブイボマスク』の天真爛漫な小池徹平とか見てて「そんな奴はいねえよ」と本気で思った。

 今だから言うけどな、ああいう知的に障害をおもちでらっしゃる方にまとわりつかれるのはかなり精神的なダメージを受けるからな。俺なんか転職したのにはしゃぎ回る子供を見るたびにフラッシュバックして辛いんだぞ。PTSDかよ。

だから邦画の障害者映画を観るたびに、真面目に障害者に取り組みやがれ!必要以上に美化されても何も伝わらないだろ!監督は『チョコレートドーナツ』観ろ、ぼけ、カス!あとファンキー加藤……あれ、消えたな。
とまあ、ぬるい感動の道具として障害者は扱われることが多い。
だがしかし、今作はそんな生ぬるくない!
主人公クリスチャンの父親がバリバリの軍人である。そのため「障害を矯正する」と謎の発想を展開。
・強いフラッシュライトを当てる(アスペルガーは感覚刺激に敏感)
・爆音でメタルを聞かせる(アスペルガーは感覚刺激に敏感)
・脛をすりこぎ棒でこする(アスペルガーは感覚刺激に……あれ?)

と、常軌を逸した矯正が行われるのである
常人でも気が触れると思う。(ちなみにこの段階で奥さんは逃げた。当たり前だ)
更に父親は息子クリスチャンを鍛えるためにインドネシアに移動。本場のシラットを学ばせるのだった。
目の付け所はいいけど違うと思う。


 そりゃあ障害者の方は手に職つけた方が後々就職などで便利かもしれない。でもだからって何で本場のシラットなの。シラットを身につけると本人にどう有利なの?そんな僕たちの些細な疑問を無視してメキメキと鍛えられていくクリスチャン。
 お陰で立派な戦闘マシーンとなってしまった。もう父親が本気で矯正させる気持ちがあったか怪しい。たぶん、真面目に調べないで思い込みだけでやってたと思う。ていうか真面目に調べたら「障害は矯正するもんじゃないな」って結論に行き着くと思う。こんなのが軍人だったなんてアメリカ軍は人材の宝庫だな!
途中、いじめっ子に素手で立ち向かう、というベストキッド的な展開もあったが「シラットで立ち向かうってやべえだろ」と応援する気持ちが1mmも生まれない主人公になったとさ。
まあ、そんなこともあったけど軍には入れたからいいよね……ってなところでクリスチャン紆余曲折あって刑務所に
そこで囚人から会計学と人間関係を学び、アスペルガー特有の場の空気を完全無視した発言で凍りつく周りに「冗談だよ」と言えるくらいのスキルを身に付けたのだった。
 ちなみにこのスキルが役に立つのは冒頭40分まで。後はもう会計も冗談もないくらいの殺戮ショーが始まる。よくある「障害に悩む」とか「障害故に人から傷つけられる」とかそういった要素まるでなし。「どうして人と分かりあえないんだろう」などと一言も言わないし思ってもない。
 もう単にキレたベン・アフレックが正確な射撃とイカれたシラットで敵をぶっ殺す様がスクリーンに流れるし、見ていてアドレナリンも流れた。
やっぱり映画はこうでなくちゃな!
昨今の邦画みたいな「学園一のイケメンが普通のあたしと」的な映画が好きな奴はこれみて学べ。
いざというときに役に立つのはシラットと銃撃。
どんなときでもヘッドショットは欠かさないプロ根性。
いつだって冷静でいる心の落ち着き。
どうだ、線の細いイケメンにはできまい。
いや、普通の人にもできない。

 さて、僕はベン・アフレックがどれくらい苦戦するかを映画館で注目するという実にしょーもない癖がある。ヒーロー映画やアクション映画に多く出演からこそ気になるってもんである。
今回の敵は、正直そうでもなかった!
結局はベン・アフレックの殺戮ショーに蹂躙されて終わりだ。
残念、もうちょっとガンバってほしかった。
ちなみに個人的にベン・アフレックがもっとも苦戦したのは『ゴーンガール』のロザムンド・パイクだと思っている。というかロザムンド・パイク自身が007を手伝ったり爆発から酔っぱらいを超技巧ドライビングで救ったりとエグい活躍っぷりを見せつけてくれているから苦戦するのもやむ無しって感じである。


今年公開の『ジャスティス・リーグ』では、ベン・アフレックの苦戦が期待される。
どれくらい苦戦し、またどれくらい盛り返すかを確認しよう!(やべ、ザ・コンサルタント関係ないや)