格闘漫画はネタが尽きた、と思っているぼくがいる。
ぶっちゃけもう新規のネタというかコンセプトは存在しないと思っている。
格闘漫画好きとしてはそれは悲しい。
古今東西、あらゆる格闘漫画を分析してみようじゃないかという魂胆で始める。
第一回目は空手バカ一代
極真会館創設者である大山倍達を描いた実録格闘漫画! という触れ込みで9割はフィクションだった素敵な作品。そこらへんは割とどうでもいい。
ぼくが気にしているのは「面白いかどうか」という点なのだから。
空手バカ一代は格闘漫画のパイオニア的存在だ。その後に多くの格闘漫画が続いた。
では何が面白かったのか。
確かめなくてはならない。
○単純な憧れ
まず、本作を読んでいて思うのは「こんなに強い人がいるのか!」ということだ。
さすがは名原作者、梶原一騎である。単純に強いだけでなく、乗り物酔いするとか、お金がなくて食い扶持に困る、とか弟子から月謝をとることにした!と清々しい顔で言わせてみるとか、なんか変にリアリティがある。
まあ、格闘描写のところはそんなにリアリティないんだけど少しオーバーくらいがちょうどいいわけだったりする。
子供達はこれを読んで「本物だ!」と信じたであろう。
そしてそのシンプルな世界観と単純な強さに憧れを抱いたはずだ。
聖書を読んでキリストに憧れても会えないけど、空手バカ一代を読んで大山倍達に憧れたら会えるのだ。
画期的だよな、それ。
しかし、単純な憧れを引き出すだけで面白い作品となったのだろうか。
○怪獣対決
おっさん同士の喧嘩をみても、何も面白くない。
そこにリアルはあれども現実を超えたものが見えないからだ。
そして空手バカ一代は面白い。
どうしてか。
先ほどの例と比べてみればわかるだろう。
出てくる格闘家たちがすさまじく人間離れしているからに他ならない。
そしてそれらが縦横無尽にページの中を駆け回っている。
それって怪獣映画と同じ構図だと思う。
「リアルにあった話ですよ」と謳っておいてこれをやるんだから、すごく太い神経で描いたとしか思えない。
しかし、何度でも言いたい。
やりすぎくらいがちょうどいい。
見ていて面白いのはそれなのだ。
リアルさで面白いやつってのはなかなか難しいんだぞ?
○後世への影響
というわけで、素性はわからないけどつよいおじさん達が大暴れするリアル寄りらしい空手バカ一代は怪獣映画と同じ構図で面白くなったということがわかった。
実録に見せかけたフィクションとか梶原一騎も人が悪いもんである。
後世の作品は「空手バカ一代」を目標にしたはずだ。
むさ苦しくてつよい男達が跋扈する作品、それが「格闘漫画」となった。