どうも。週1で映画観ます。弐番です。


ノア 約束の舟

ノア


旧約聖書「創世記」の中にある「ノアの箱舟伝説」を、ブラックスワンの監督が独自の解釈で映画化したこの作品。

「ノアの箱舟伝説」と聞いてスプリガンを思い出したあなたはおオタクである。


視聴に至って「宗教色はなあ」と難色を示される方も多いだろう。

しかし、特に気にする必要もない。

というのも、god ではなく creater 創造主 と表現したり、聖書の一節を引用したりすることもなく、スムーズに話が進むからだ。

しかし、だからといって手放しで喜べる訳でもない。

欧米の価値基準である「キリスト教感」は依然として出てくるからだ。

もっとも、これは欧米の映画のどれにも当てはまると言えるだろう。

あのダークナイトのジョーカーですら、その価値観を前提に作られているからだ。

だから、「失楽園」「ノアの箱舟伝説」「アベルとカイン」程度は話を知っておかないと話にはついて行きづらいかもしれない。


とりあえず、この映画の素晴らしい点は「映像がとってもきれい」ということだ。

冒頭部分でお告げを受けたノアが朝焼けの丘にたたずむシーンがあるのだが、これが非常に美しい。ポスターになったらきっと買っちゃうね、という程だ。
洪水のシーンも大雨のシーンも凄く綺麗だ。
もうそれだけでこの映画、お腹いっぱいにさせてくれる。

なにごとにおいても合理的説明がなされているのも良い。
人力であんなに大きい舟とか作れるの?
どうして、草食動物と肉食動物が舟の中で仲良く出来るの?
といった長年の疑問(愚問かも)にも、しっかりと説明がなされている。
これならば「なるほどー」と両手を叩ける。
ちなみに、どうやって舵を取っていたかは不明だ。
あんな航行能力のなさそうなものを、どう操っていたかも分からない。
しかし、「神が救って下さる」と信じているノアだからそこは割と頭の外だったのだろう。
とりあえず、大洪水を耐え抜いただけはある。
もしかすると、しっかりとした設計だったのかもしれない。
バラスト減らして過積載したどこかの船とは大違いだ。

ほっとしたのは、「字幕 戸田奈津子」の不安感が、外れたことか。
ぶっちゃけ、最初に戸田奈津子の名前を観た際に「うげえ」となった。
ギャングオブニューヨークで「大天使ミカエル」を「大天使マイケル」と訳した戸田女史のことである。冒頭の「アベルとカイン」の「カイン」も「ケイン」と訳されるかもしれない、という不安は見事に外れた。ちゃんと「カイン」だった。
ただ、最後の方で腑に落ちない役があったのは確かだ。
観ていて「これ、逆にわかりづれえだろ」てなものはあった。

しかし、突っ込みどころが多いのも確かだ。
冒頭からいきなりラッセルクロウ演ずるノアが、正当防衛とはいえ人を殺しまくる。
箱舟に襲いかかる奴も、殺す。
悪い奴は殺す。
見殺しにする。
そして殺す。
そんなときは決まって、ラッセルクロウお得意の睨みつける演技である。
ぎろっ。
これが以上に多い。
「3時10分決断のとき」では、最後の最後で見せたからこそ際立っていた。
しかし、今回常ににらみまくっている。
まあ、「覚悟」の象徴として描いていたのかもしれない。

予告編では「舟をめぐる争い」的な感じでアピールしていた。
確かに、舟を巡る争いはあった。
そこまでの流れは非常に良かった。
テンポもいいし、映像も面白い。
ただ、後半の失速感は否めない。
舟に乗ってからが、長い。
正直「ねえ、これまだ続くの?」感が強かったのは確かだ。
一大スペクタクルを求める人には、足りない。


そして、最大の問題は「ところどころにあるバカっぽさ」だろう。
殺人者カインの子孫にして、人の国の王であるトバル・カインはやたらと叫ぶ。
それ、意味あるの? っていうシーンでも叫ぶ。
やたら叫ぶし、やたら人間臭い。
「俺たちは人間だ!」
「戦うぞ!」
と兵士達を鼓舞し、自ら前線に立つ様は彼が王の器である事を示す。
殺人者である故の「人間くささ」みたいなものがノアとの対比で際立つ。
そして同時にバカっぽい。
お前が行っちゃうのか、みたいに突っ込んでしまう。
野暮といえば野暮だけど、気になるのだから仕方なかろう。
ちなみにこのおじさん、蛇を食らうシーンがある。
執念深さと同時に、「そそのかされた」「魔が差した」ということを否定するためのシーンだろう。


とまあ、こんな感じの映画である。
SFを求めている人には割と物足りなく映るのは仕方ない。
アクションも決して上手に描けているともいえない。
だが、そんなのはこの映画のおまけだ。
真の「人間性」にぐっと迫ろうとする監督の意志が反映されている映画。
にらみまくるラッセルクロウと、叫びまくるエマワトソンが観たいなら、映画館に足を運ぶ事をお勧めする。
ちなみに、スクリーンは大きい方がいい。
小さな田舎の映画館だと「は?」となってしまうことは目に見えている。


僕の中の評価は65点。

後半のぐだぐだ感がどうにかなれば、80点はいっていたのに。