その人は家もなく、財産は多分傍らの大きなビニールバッグだけだと思われる。

東京の真ん中で、
不思議と誰にもその存在を認められず道にしゃがみこんでいた。

ツツジの生け垣に埋まるみたいに。

何故か目がいった。
自分も食べ物を探すのにやっとのはずなのに、

その老人は鳩にパンくずをやっていた。
それを見て、

人とは、
どんな環境の中にあっても、

何かを愛でたい、

そう思うものなのだな。

そして同様に、

愛されたいとも思う生き物なのだと、

ズドン!

と響いて、

私は回り道をしてそこを立ち去った。

それは彼の心癒される至福の時なのであろうから。