ある男のお話

ある男は自分のことを

奴隷だ、奴隷だと

ことあるごとに言っていた

ある日、男の妻が言う

「貴方は王ですよ、貴方は自分が

奴隷だと言うけれど、座っていれば

食事が用意され、お風呂は沸いていて

事細かな用事も私が処理して…

私の方が奴隷ではないですか?」

それでもその男は言う

自分は奴隷だと…

妻はこの男は自分が奴隷でいたいのだと

理解した

奴隷なら、国民の責任をもつ必要もない

与えられたものに感謝するでもなく

奴隷であろうとする

そして、自分の立場を憂う



そのうち希望通り、奴隷になることが

できるだろう

その時は国民は誰もいない

王であることを忘れた男

望みは叶う

妻は別国の女王となるだろう



ただの御伽噺グラサン