~夜間中学校の教室~
あめ先生:さて、今日から新学期という事ですが。
この新学期に新入生を迎えました!
既に座っておりますが、一番前のグラハムさんです。
60歳という訳で、先生より2倍以上の年上の生徒ですが。
早速授業が始まった・・・。
あめ先生:まず授業を始める前に、皆さんに伝えないと
ならない事があります。
何時も学期はじめにするお話ですが、先生達は口がすっぱく
あめ先生:まず、ここは遊びに来ている場所でも、町内会の
寄り合いでも、お茶飲み友達と逢いに来る場所でもありません。
”義務教育の現場”なんです。
昼間は皆さんの子供達と言っても過言ではないほど、現役の
中学生の生徒達がここを使っております。
くれぐれも、人生の先輩として。恥ずかしくない行動、マナーを
あめ先生:飲酒、喫煙、麻雀、競馬の予想・・・全面禁止ですよ。
それと、ちゃんと学校に来てください。
学校に来なかったからといって、13~5歳の子供じゃないので。
家にまで行って呼び寄せるという事はしません。
真剣に学びたい人にはちゃんと勉強の場を提供されています。
グラハム:うわぁ~~、中学校って凄いところなんだねぇ・・・。
ぼく通えるかしら・・・。
ヤンキー兄ちゃんの2人組も、真剣に聞いている・・・。
あめ先生:いいですか!?
出席はみなさん、皆勤賞をめざしてがんばりましょう!
ちゃんと成績に満たない場合は、何年でも留年してもらい
ますからねw。
授業終了後・・・
不良もしゅもしゅ:チッ!かったりーぜ!
あんな問題分かる訳ねぇ~だろ・・・!
なんだよ、あの分数の足し算ってよぉ~w
グラハム:割り算なのに割り算同士を+って事になるって事?
あれへんな気分ですよね・・・納得できないっていうか・・・。
思わず、グラハムくんは、一番若そうな彼に声をかけてみた・・・。
すると・・・
不良もしゅもしゅ:ところで、おっちゃんさw。
何で今更になって中学生なんだよ!?おっちゃんなら、もう
どっかの会社の社長かと思ってよ・・・。
カネさえあれば、勉強なくたってやってけんじゃないの・・・?
グラハム:ぼくはねぇ・・・会社の社長でもなんでもないんだよ。
ぼくはね・・・字が読み書きできないんだ・・・。
だから、この時間とこの後の補修の時間で読み書きも教わって
いてね・・・。それから帰って寝るだけだよ。
君等には信じられないかもしれないけど、昔はね、小学校ですら
通わせてもらえなかったんだよ・・・。
不良もしゅもしゅ:えっ!おっさん、小学校も行ってねぇ~のかよ!
グラハム:そしたらね、ぼくの恩人とか親方がね・・・。
自分の大事な人を守るために、勉強しなさい!って教えてくれたんだよ。
何年かかってでも良いから、中学校を卒業して来い!って。
他人と自分とを比べる為の勉強じゃなくて・・・。
自分と自分の家庭とか、大事な大事な人を守るための勉強をして来い。
って言われてさ・・・。
今まで来られなかった学校へ、やっと来られたんだよ・・・。
話を聞いてじ~~んとしている。
不良もしゅもしゅ:そっかぁ~~、大事な人を守るための勉強かぁ・・・。
オレさぁ・・・、親がウザくてツッパッてばかりだったから。
まともに中学校も行かないで家出ばっかりしていたからなぁ・・・。
すげぇ良い事聞いたわ・・・。
グラハム:君はまだまだ若いんだから!
何度でも何度でも勉強できる機会があるんだから・・・。
一緒に卒業して、両親を喜ばせてあげな・・・。親は待っている筈だぜ。
それから、グラハムと彼は。
中学生を5年経験して、卒業してゆき。
その後彼は有名企業に就職、会社の重要役員にまで昇り
詰めたそうな・・・。
引き続き、【舞台:65年目の恋文(ラブレター)最終幕⑯】
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