~グラハムの家~
学校を飛び出したグラハムは、家に帰って来た時だった・・・。
そこには母ちゃんが静かに息を引き取っていた・・・。
グラハム:あれ?おかあちゃん・・・?
布団の上には静かに眠る母ちゃん・・・。
顔には白い布がかけられ、冷たくなっていた・・・。
グラハム:ねぇ!おとうちゃん!!どういう事なの!?
おとうちゃんはこんな時なのに、何時もの様に酒を飲み
働きもせず、ただただゴロ寝するばかりである。
聞いても何も返事の無い、おとうちゃんは捨て置き。
グラハム:母ちゃ~ん!死んじゃったのかよぉ~!
なんでだよぉ~!
グラハム:えぇ~~ん!えぇ~~ん!お母ちゃん!
起きてよぉ~!何で死んじゃったんだよぉ~~!
おとうちゃん:うるせーーな!クソガキ!!寝られネェじゃねーか!
おとうちゃんの逆ギレが部屋に響いた・・・。
グラハム:だって!何でお母ちゃん死んじゃったの!?
おとうちゃん:シラネぇーよ!そんなの!!パート先で倒れて
そのまま意識を失ってそのまま死んじまったんだとよ!
こっちは良い気で寝ていたら、叩き起こされて連れて帰るのに
大変だ!ってのに!
母ちゃんは、後に聞いた話では。
パート先で仕事中に心臓発作を起こしそのまま倒れ。
病院へ運ばれるものの、亡くなったという・・・。
長年の心労から来るものもあったのかもしれないが・・・
それにしても・・・。
グラハム:何でおとうちゃんは、学校にいるぼくに連絡も
くれないのさ!
おとうちゃん:第一な!お前はオレの息子でも何でもネェ!
お前が学校に行っていても、連絡する必要なんかないだろ!
それに、学校に連絡もしていなのに。何でお前学校から帰って
来てんだよ!そっちがおかしいだろ!!
もはや、仮初めにも父親としての幻影もなくなってしまった
この母ちゃんの再婚相手には、何の親心一つ残されてはいなかった・・・。
グラハムがこの日、何故学校を飛びして帰って来たのか?
そんな理屈はもう、どうでもよくなってしまった・・・。
おとうちゃん:コイツが働けなくなって、カネ入って来なくなったじゃないか!?
むしろ明日からのオレの生活の方がどうにもならなくなって困ってんだ!
もう、お前良いから出ていけ!
この家にグラハムの居場所は、もうどこにもなかった・・・。
グラハム:いいよ!こんなおとうちゃんだとは思わなかったよ!
出て行く!!
おとうちゃん:あぁ~!さっさと荷物まとめて出て行け!!
五月蠅いガキがいなくなって助かるわ!
グラハム:ぼくだってこんな家出て行ってやる!!
小学校2年生の男の子が、荷物まとめて出て行くにしても。
グラハムに行く当てがある訳でもなく。
でも、こうと決めたからには、彼は後には戻れない・・・。
そんな中、グラハムは荷物をまとめて出て行く事にしたのだった。
グラハム:こんな家、ぼくの方から出て行ってやるんだ!
どうにかなるさ!!
何も言わなくなってしまった、おとうちゃんとお母ちゃん・・・。
この家にはもう、冷たい空気しか流れてはいなかった・・・。
グラハムは、この時のこの景色を一生忘れる事はないだろう。
短い間の暮らしを、子供ながらに少しだけ思い残しつつ振り返ってみた。
グラハム:ど~しよう・・・。ぼく、これからどこへ行けばいいんだろう・・・。
さようなら!今日までぼくを育ててくれて・・・ありがとう・・・。
今度また産まれてきたら、ぼくのお母さんになってね・・・。
そう言い残し、小学校2年生のグラハムは母の葬式を見る事無く
家を去って行った・・・。
引き続き、【舞台:65年目の恋文(ラブレター)第2幕⑧】
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