グラハムは、難読な漢字を目の前に苦戦していた。
そして、己の半生を恨み、嘆くばかりで一つも前には
進んではいなかった・・・。
グラハム:お母ちゃ~ん、母ちゃん・・・。
何で死んじゃったんだ・・・。ぼく、学校に行きたかったんだよぉ。
母ちゃん:グラハム!グラハム!!
泣くんじゃないの!
グラハムは、驚いて顔を上げてみた。
するとそこには、亡くなった母ちゃんがやってきた・・・。
母ちゃん:グラハム、ごめんね。母ちゃんが学校に行かせて
あげられなくて・・・。
母ちゃんは、お前が寂しくないように。もっとがんばって生きた
かったんだけどねぇ・・・ごめんね・・・。母ちゃん、お前だけが
ずっと心配だったんだよ・・・。
グラハム:母ちゃん・・・
母ちゃん:母ちゃんね、お前がちゃんと大人になるまで見届けた
かったわ・・・。お前がちゃんと大事な人を守って、可愛い孫の顔
だって見たかったのよ・・・。それもできないままだったから・・・。
心配で心配で・・・。母ちゃんはそれだけが悔しいの・・・。
グラハム:母ちゃん・・・ぼく・・・これが夢でも何でも良いんだ・・・。
また逢えて嬉しいよ・・・。
母ちゃん:母ちゃんね、小学校にはちゃんと行ったのよ!
母ちゃん:さてとっ!どれどれぇ~?
難しい漢字だよねぇ~・・・。これ!!
これはね!鱧(はも)って言うんだよ!分かったかい?
グラハム:お母ちゃん。頭良いんだねぇ・・・。
母ちゃん:頭が良いんじゃないんだよ!
お前に美味しい魚を食べさせる為にね、お魚屋さんの人に
ちゃーんと聞いて教えてもらったんだよ!
こっちは、鮭(さけ)だわね・・・。鮭毎朝食べたの覚えてる・・・?
学校で教えてもらう勉強事なんてね。人生の半分も無いんだよ・・・。
母ちゃん:ほら!グラハム。ペンを持ちなさい!
そこに、”はも”って。こっちには”さけ”って
書きなさい・・・。
グラハム:”は・・・も・・・”これで”はも”なんだね・・・。
”さ・・・け・・・”だね。
母ちゃん:そーよーw”はも”!”さけ”!できたじゃない・・・。
母ちゃんはそこにはいなかった・・・。
グラハム:あれ?母ちゃん・・・?
どこへ行ったの・・・?
おっちゃん:なあ、グラハム!お前、ちゃんと学校へ行け!
今からだって全然遅くは無いぞ・・・。
おっちゃんはな、中学校も行かせてもらえない時代だったから・・・
と言えばそれはそれで仕方がないが。
分からない事の言い訳でしか無い時もある・・・それはそれぞれ
理屈が違うけどな・・・。
でも、お前はもっと勉強しないとな・・・。
別にな、勉強できる奴が勉強できないやつをバカにしたり、
その差を知る事が勉強するっていう意味じゃない。
勉強するっていうのはな、お前にとって大事なお前の家族をこの先
一生守っていく為の必要な手段なんだ!
今からでも遅いって事は無い、学校へ行け!学校へ行って、もっと
もっと腕も知識もある板前になれ!お前ならできる!
信じているぞ!!何年かかっても良いんだ、何度失敗しても良いんだぞ。
それと、前に行っていた小学校から、落としたお金は事情を話して
取り戻してあるから・・・時間ができたら取りにおいで・・・。
そう言い残し、グラハムの中から色々な人達が現れては消えて行った・・・。
それから数日の後、おっちゃんの元へ行き。
あの時をお礼を述べて、落としたお金を無事に取り戻したのだった・・・。
引き続き、【舞台:65年目の恋文(ラブレター)第3幕⑬】
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