ここに、一人の男がいる・・・。
彼の見つめる視線の先には、1頭の馬がいた・・・。
彼の名は、マンセル調教師。
彼は中央競馬で調教師をしており、ある噂を聞き付け
育成センターへやってきた・・・。
マンセル調教師:あの馬だな・・・。確かに噂は本当かもしれない。
クリフさんが、もしかしたら、もしかすると言っていたのは・・・。
まんざら伊達ではないかもしれない・・・。
(牧場の柵を飛び越えた時の、ボウ!)
2歳にして、類稀なる跳躍力。姿勢。フォーム・・。
もしかして、ただの風の流布かと思いきや・・・。
2歳の育成時代は、まだまだ幼さもあるが。
馬体の作りは、目を見張るものがあった・・・。
そして、時は経ち。3歳になり・・・。
いよいよデビューの頃を迎える。
ボウも大きくなり、いよいよ本格的に、栗東トレーニング
センターのマンセル厩舎へ行く事になった。
マンセル調教師:おぉ~い!ボウ!いやいや、
もう、ボウじゃないな。
お前には立派な名前が付いたんだもんな。
マンセル調教師:そうだ!お前の名前は、
”トウカイテイオー”だもんな!
おぉ~いテイオー!一緒にがんばろうな!
テイオー:がるるるるる・・・。
そこへ、馬主のジャックがやってきた。
ジャック:どうですか?先生!テイオーの様子は・・・?
マンセル調教師:いやいや、聞いていたより全然迫力が違うね!
実際に見るまではと思っていたけど、テイオーはもしかしたら、
馬主ジャックの奥さんで、礼華さんだった・・・。
礼華:先生!ご無沙汰しております。
ホントにもう、家の人喜ばせないでくださいね。直ぐに
その気になって、ダービーだ!天皇賞だ!って。歯止めが
効かなくなっちゃって。毎日、馬の話ばかり聞かされるんですものw。
馬好きにも困ったものですわよw。
ジャックの馬好きもさる事ながら、その話に付き会う礼華さんの
内助の功は、マンセル調教師も良く知っている事だった。
マンセル調教師は、振り返り二人へ伝えた・・・。
マンセル調教師:いや・・・、でも奥さん・・・。
もしかしたら、このトウカイテイオーは良い所で勝てる
超大物の馬かもしれませんよ。
マンセル調教師は、二人へ静かに語りかけた・・・。
この時何かしら、確信をもっていたのかもしれないが。
手応えを感じていたのかもしれない。
ジャック夫婦は、マンセル調教師の話を聞きながら、
これはもしかしたら凄い事になるのかもと思い。
ワクワクするよりというよりも、得体の知れない大きな期待と
不安を感じて。夫婦は少しだけ身ぶるいをしているようだった。
そこへ、この物語には欠かせない一人がやってきた。
これからこのトウカイテイオーと苦楽を共にする。
育成センターのセンター長、ドームズくん。
ドームズセンター長:先生!マンセル先生!
それに、ジャックさん!お揃いで!
遂に、この物語を語るに欠かせない人物が、勢ぞろい
した瞬間でした。
マンセル調教師:おぉ~、トームズさん!お久しぶりです。
ドームズセンター長:先生!お電話頂ければお迎えに行ったのに・・・。
マンセル調教師:いやいや、今回はこっそりとジャックさん夫婦と一緒に
覗き見するくらいのつもりだったからね・・・。
礼華:テイオーくんがいつもお世話になってます!
ドームズセンター長:いえいえ、こちらこそ何時もありがとうございます。
ジャック:センター長、いつもお世話になってます。
ドームズセンター長:先生!どうですか?
今日の調教これからなので、観て行きますか?
マンセル調教師:そうだね、キャンターで1,2本見せてもらいたいね。
キャンターとは、駈け脚。全速力で走るのがギャロップなのですが、
キャンターとはギャロップの一つ下の速度の事。
ドームズセンター長:じゃあ、準備するのでちょっと待っていて
ください、コースの空きを確認してきますから・・・。
礼華:テイオーくんの走りを観るの初めてw!楽しみだわ!
ドームズセンター長が準備をして、いよいよ走りだす。
トウカイテイオーは、どんな走りをするのか?一同はわくわくして
到着を待った・・・。
(ドドドッ!ドドドッ!ドドドッ!・・・)
ドームズセンター長が自ら騎乗し、コースを走りだした・・・。
テイオーは、小気味の良いリズムで走りだし、徐々にスピードを
(ドドドッ!ドドドッ!ドドドッ!・・・)
ラチ沿いを、トウカイテイオーと、ドームズセンター長が、
マンセル調教師達の前へやってきた。
ラチとは、柵の事。コースとの境目にあるもので、よく言われる。
”ラチが開かない”とは、このラチの事。物事が打開できない様を
この柵のお陰で前が開けない様を例えて、”ラチが開かない”と言われている。
(ドドドッ!ドドドッ!ドドドッ!ドドドッ!・・・)
全員、トウカイテイオーの走りに見とれてしまい。
言葉を失うばかりだった・・・。
しかし、一人だけ確信を持ったようだ!
マンセル調教師:これなら・・・イケるっ!!
そして・・・。
トウカイテイオーは、2歳の12月にデビューし新馬戦を見事に勝利。
明けて3歳の春。無敗のまま皐月賞トライアルにも勝ち。
クラシックレースへの優先出走権を獲得!
クラシックレース第1弾、皐月賞へ駒を進めるのでした。
では、実際の皐月賞でのトウカイテイオーの走りを
ご覧ください。
引き続き、舞台:この星を継ぐ者へ!:第2幕②をご覧ください。