日はすっかり落ちて、街灯の明かりを頼りに徒歩で智君のマンションへと向かう。

緩やかな坂道の途中、追い越していった車が智君のマンションの少し手前で停まる。

ゆっくりと助手席のドアが開いて、降りてきた人物に何気なく目をやって、思わず息をのむ。

「智君・・・」

街灯の明かりに照らされた華奢なシルエットは間違いなく智君だ。

運転席のほうへと目をやるが、ここからでは男なのか女なのかすらわからない。

俺は智君の交友関係に詳しくない。

自分のことを話すことがない人だし、学生時代以降はあまり接点のない人生を歩んでいる。

共通の友人もほとんどいない。

会社帰り、こんなふうにマンションまで送ってくれるような友人がいるかどうかも・・・

それがただの友人なのかどうかも・・・知らない。

振り返って運転席をのぞき込む、あまり見たことがない笑顔を浮かべた横顔。

その笑顔の先の運転手との関係は・・・?

ただの友人?

それとも・・・

言いようのない不安がわきあがってくる。

今日会えると返事をくれたのだから・・・

少なくとも今日は俺が優先されたんだ。

そう思っても、心が落ち着くわけではない。

笑顔を崩さず運転席に向かって手を軽く振って・・・

車が走り去るのを見送って、ゆっくりとこちらへと顔を向けた智君には、もう先ほどまでの笑顔はない。

俺の姿に驚いた様子はない。

車で追い越したときに、俺の存在には気づいていたということか。

俺へ向ける瞳には熱を感じない。

冷ややかとも思える視線に、踵を返したいような気持ちを抑えて、智君へと向かって歩を進める。

「・・・思ったより早かったんだね」

それはどういう意味?

尋ねる勇気はない。

俺の返事を待たず、すっと踵を返してマンションに入っていく智君の背中を見つめる。

俺が追いかけてくると思っているのか・・・

それとも追いかけてこなくてもいいと思っているのか・・・

 

 

 

 

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久しぶりの更新になってしまいました。

久しぶりの更新なのに、こんなもやもやした展開(^^;)