カラン・・・

ドアチャイムの音に反射的に振りかえると長身の男性が入ってくるのが見えた。

時々この店で見かける、長瀬さんの友人で、確か・・・松岡さんといったと思う。

芸能関係の仕事していると聞いたような気がするが、まるで自身が芸能人のような容姿とオーラをもった人物だ。

「いらっしゃい」

長瀬さんが愛想のいい笑顔を浮かべると、松岡さんも片手をあげて愛想よく応じる。

その様子を横目に顔を戻そうとして・・・

松岡さんの後ろからふいに顔をのぞかせた人物に・・・息が一瞬息がとまる。

ざっと・・・あの日の風が吹いた気がした。

風に舞い散る桜の花びらと・・・

雨上がりの土手の匂いがよみがえる。

まさか・・・

そんな・・・

でも・・・

「・・・さと・・し・・・?」

俺の声にならないつぶやきを

「あれ・・・今日は智君もいっしょなんだ?」

長瀬さんの陽気な声がかき消す。

驚いて長瀬さんを見る。

智のこと・・・知ってる・・・?

長瀬さんが不思議そうに「ん?」と首を傾げる。

一瞬迷って「いえ・・・」と顔を左右に揺らして・・・桜色のカクテルに視線を落とした。

長瀬さんに促されて、松岡さんは俺の隣の席に腰かけると、その隣に智を座らせる。

松岡さん越しにさりげなく智を窺う。

間違いない。

見間違えるわけがない。

・・・智だ。

こんなところで会うなんて・・・

驚きと戸惑いで、心臓がトクトクと音を立てる。

すぐそばに智がいる。

俺は夢を見てるんだろうか。

今朝の夢の続きを・・・