「そういえば・・・大野さんと何かありました?」
智君と松本の話から、突然こちらに矛先が向いて
「・・・なにかって?」
予想外のことに動揺して声が上ずる。
これでは何かあったと言っているようなものだ。
つくづく・・・予想外のことに弱いというか・・・
嘘がつけない俺に、ニノがくすりと笑う。
「・・・あったんですね?」
ニノの察しの良さには勝てない。
観念して、ため息をつく。
「何かって言うか・・・告白したんだ・・・」
「・・・大野さんに?」
それ以外誰がいるんだろう。
小さく頷くと
「へえ・・・またそれは思い切ったことを・・・」
ニノは少し驚いたように目を見開く。
まあ確かに・・・
俺にしてはずいぶん思い切ったことをしたと思う。
真夜中、酔った勢い。
フラれること前提の告白だったから・・・
「それで・・・?」
「それで・・って・・・」
わざわざ聞かなくてもわかるだろう。
「ニノが言っていた通り、俺には全く興味がないってことを確認しただけ」

「・・・ダメだったってこと?」

遠慮がちに、でもきっちりと傷口に塩を塗り込んでくるニノに苦笑いで応える。
正確にはつきあってもいいとは言われたけど・・・
それこそ松本と別れた後の寂しさを埋める緩衝材でしかないし。
形だけつきあっていても、結局片思いなんて虚しいだけだ。

ふいに目の前のドアが開いて件の智君が相葉君と話をしながら入ってくる。

一瞬ぱっと目が合って・・・次の瞬間さっとそらされる。
告白の代償は思った以上に大きく・・・
あれ以来智君には明らかに避けられている。
話があるときはどうするんだ・・・なんて言っていたのに、話しどころか、目が合おうものならそらされる始末。
失恋の痛手を癒す新しい恋なんて、すぐ見つかるはずもなく・・・
こんなことなら告白なんてしなければよかったかも・・・と、ため息をついた俺の隣で
「ふーん・・・なるほどね・・・」
ニノがなにか含んだようにつぶやく。
なるほどって・・・?
ニノへと目をやると
「・・・いい傾向なんじゃないですか?」
ニノは唇の端にうっすらと笑みを浮かべる。
いい傾向・・・って・・・?
なんのことかわからず、首を捻る。
「大野さん・・・翔さんのこと気になってるみたいだから・・・」
・・・気になってる?
智君が?
俺のことを?
「いや・・・それはないと思う」
断言できる。
だってずっと避けられている。
まともに口もきいてもらえないし、
目さえ合わせてもらえない。
気になっている・・・というよりも、嫌われている。
嫌われて・・・
そこに思い当って、気持ちが沈む。
「でも・・・」
ニノは俺たちから少し離れたところに腰を下ろした智君へちらりと目をやると
「今もこっちが気になってしかたないみたいですよ?」
そう言ってくすっと小さく笑った。