「・・・え?」

きょとん・・・として俺を見返した智君は次の瞬間くすくすと可笑しそうに笑いだす。

「真剣な顔で何を言い出すのかと思ったら・・・なにそれ・・・」

どうやら俺の告白を本気だと思ってないらしい。

智君にとって俺は好きとか嫌いとか・・・そういう感情とは無縁の存在。

そんな智君に合わせて俺も気のないふりを続けてきたから・・・

その俺から好きだって言われても、冗談としか思えないのもしかたないけれど・・・

でもこんなふうに笑うのは酷いんじゃないか・・・?

「・・・なにがおかしいの?」

笑い続ける智君に問いかける声は自然と低くなる。

憮然となった俺を見て、笑うのをやめた智君はすっと首をすくめる。

「だって・・・翔ちゃんが変なこと言うから・・・」

「変なこと・・・?」

「翔ちゃんが俺のこと好き・・・なんて変でしょ・・?」

そんなことあるわけないよね・・・?
とでもいうように、智君はちょっと困ったように眉を寄せる。
冗談じゃなかったら・・・迷惑ってことか。
俺の想いは智君にとっては迷惑なだけなのか。
・・・わかっていた、そんなこと。
だからずっと思いを隠してきたんだ。
でも・・・もう冗談で済ませられない。
済ませるつもりない。
迷惑なら迷惑だとはっきりいってほしい。
この不毛な長い片思いを終わらせたい。
智君から・・・この奇妙な関係から解放されたい。

「茶化さないで。本当に好きなんだ・・・智君のことが・・・。前に言ったでしょ?ずっと片思いしているひとがいるって・・・あれ・・・智君のことだよ」

「片思いの話は聞いたけど・・・でも・・・」

智君は困惑気味に俺を見つめて・・・

「それが俺って・・・ほんとなの・・・?」

まだ半信半疑・・・といった様子で首を傾げる。

「本当だよ・・・智君に嘘はつかないよ。ずっと好きだったんだ・・・気づいてなかったでしょ・・・?」

即座にこくりと頷く智君に思わず苦笑すると

「気づかないよ。そんなこと一言も言わなかったし・・・」

智君はちょっとむっとしたように唇を尖らせる。

「言えなかったよ・・・」

そう・・・言えなかった。

言えばこの関係は終わってしまうってわかっていたから。

恋愛とは無縁の気楽さ・・・

身体だけの割り切った関係。

それが智君にとっての俺の存在意義だってわかってたから。

想いを知られたら即存在意義を失う。

例え恋人になれなくても・・・

その髪に・・・

その唇に・・・

直に触れることができる関係を手放したくなかったんだ。

それがなんの実りのない関係だとわかっていても。