「そっかあ・・・だめだったのか・・・」
まるで自分のことのように肩を落とす相葉君を見て、なんだかすごく悪いことをしたような気持ちになってくる。
「うん・・・そうなんだ。ごめん・・・」
思わず謝ると
「別に俺に謝らなくても・・・」
相葉君は苦笑いを浮かべて顔の前で手を振る。
「松潤と大ちゃんが幸せそうだから・・・ニノと翔ちゃんもうまくいくといいのになって思ってたんだけどね・・・」
「うん・・・ごめん・・・」
「だから謝らなくても・・・」
困ったように少し眉を寄せた相葉君に、またごめんと言いそうになるのを飲み込んだ。
「そっか・・・まあ・・・翔ちゃんがそう決めたんならしかたないよね」
相葉君は残念そうに言って
「でもさ・・・いったいニノの何がダメだったの・・・?」
遠慮がちに聞く。
「なにがって・・・別にニノに何か問題があるわけじゃないよ・・・」
そう、ニノがダメなんじゃない。
相葉君が言うようにニノはかわいいし・・・気も合うし・・・。
付き合えば楽しいだろうということもわかっていた。
ニノには何の問題もない。
俺の問題だ。
俺が・・・智君じゃないとダメなだけだ。
「そうなの・・・?じゃあ・・・翔ちゃん実は恋人がいるとか・・・?」
酔っているせいか・・・
深く追求してくる相葉君に困惑しつつ・・・
「いや・・・いないよ。残念ながら・・・」
首を横に振りながら自嘲がこぼれた。
恋人になってほしい人はいるけれど・・・。
俺にはまったく興味がないらしい愛しい人の顔を思い浮かべてため息をつく。
「そんなんだ・・・。じゃあ・・・ニノと付き合えばよかったのに・・・」
「・・・え?」
・・・なんでそうなる?
驚いて相葉君を見返した。
「だって・・・恋人いないんでしょ?だったら、ニノと付き合ってみればよかったんじゃない?」
今現在恋人がいないならつきあえばいい・・・って?
恋人になるってそんな簡単な話じゃないだろう。
そう思って
「いや・・・そういうわけには・・・」
言葉を濁すと
「なんで?」
相葉君は不思議そうに首を傾げる。
「なんでって・・・」
「ニノのことが嫌いなわけじゃないでしょ?」
「それはもちろん・・・」
嫌いではない。
むしろ好きだと思う。
メンバーとして・・・
友人として・・・だけど。
「だったらお試しでつきあってみればよかったんじゃない?」

相葉君らしからぬ提案に絶句する。

お試し・・・って・・・。

恋人にお試し・・・ってあるのか?

「つきあうって・・・そんなもの・・・?」
「そういうものじゃないの?」
あっけらかんと言い放つ相葉君に呆気にとられる。
若いころならともかく・・・
この年齢なんだから、もう少し真剣に考えるものじゃないのか?
試しに・・・だなんて・・・そんな・・・。
それとも・・・俺が難しく考えすぎなんだろうか?
「松潤と大ちゃんもお試しでつきあったんだって」

「・・・え?」

今・・・なんて?

松本と・・・智君が・・・?

お試し・・・?

一瞬何を言われたのか理解できなくて・・・

意味を成さない単語がぐるぐると頭の中をまわる。

「え・・・?って・・・知らなかったの?」

相葉君は驚いたように目を見開く。

「・・・知らない」
智君と松本がどうやってつきあうことになったのかなんて聞いていない。
つきあうことになった・・・って報告を受けてから、ろくに智君と話をしてない。
松本との話なんて聞きたくないし・・・
ふたりのことを知りたくもなかった。
そんな俺の気持ちなんて知る由もない相葉君が
「ふたりとも恋人と別れた後で・・・なんとなく意気投合して、試しにつきあってみる・・・?ってことになったみたいだよ」
いろいろとよけいなことを教えてくれる。
なんとなく意気投合して・・・
試しに・・・

そう・・・そんな理由で・・・。

そんな理由で松本は智君を手に入れたのか。
智君もそんな理由で松本と・・・
視界がぐらりと揺れた気がして、テーブルにひじをついた。