崩れ落ちた身体にのしかかる重い塊。

抵抗しないのをいいことに無遠慮に肌を這う手。

このバカは、いったいいつまでこんなことを続ける気なんだ?

確かに失恋したと聞いたときはかわいそうだと思ったけれど、それももう片付いた後だ。

いくらなんでももう気も済んだだろう。

そもそも、かわいそうだ・・・なんて妙な情けをかけたのがよくなかった。
どうも翔ちゃんには甘くなりすぎる自覚はある。
そこは俺にも非はあるのかもしれないけど・・・
翔ちゃんもそれをわかっててやってる節があるから質が悪い。
それにしたって今回はやりすぎだろう?

八つ当たりにもほどがある。

だいたい何の因果で俺がこんな目に合わないといけないんだ?

いつまでもこんなことを続ける翔ちゃんに、そしてそれを許してしまっている自分にもだんだん腹が立ってくる。

「・・・いい加減にしろっ」

怒りにまかせて翔ちゃんを突き飛ばした。

うっ・・・と小さな呻き声とともに、身体にのしかかっていた重みが消えて・・・

やれやれ・・・と息をつく。

最初からこうすればよかったんだ。

下手に仏心なんてだしたばっかりにひどい目にあった。

悪魔に仏心は無用だ。

身体を起こして、乱れた呼吸と衣服を整えつつ・・・
翔ちゃんへと目をやると、腹部を押さえてうずくまったまま・・・
しまった、強く蹴りすぎたか?とにわかに焦る。
いや・・・そんなはずは・・・
怪我をさせないように手加減はしたつもりだったんだけど・・・
心配になって
「・・・翔ちゃん・・・大丈夫?」
うずくまったまま動かない翔ちゃんの肩に手をかけた瞬間・・・
視界が反転する。
あ・・・と思った次の瞬間、どんっと背中に衝撃がきて、
再びのしかかる塊が両手の自由を奪う。
「智君・・・ひどい。急につきとばすなんて・・・」
俺を見下ろす翔ちゃんが、拗ねたように唇を尖らせる。
もしかして・・・もしかしなくても騙された・・・?
「バ・・・バカっ!ひどいのはどっちだ・・・!」
この悪魔がっ!