あれ以来、智君とは話をしていない。
話をしてもらえない、が正しい・・・か。
もちろん家に来ることもなくなった。
時々視線を感じる気がして、振り向くと逸らされる。
つまり目も合わせてもらえていない。
完全に避けられている。
そんなふうだから、ニノとのことを言い訳をする機会なんてない。
まあ機会があったとしても、言い訳のしようもない。
「俺のせいですね・・・」
申し訳なさそうに眉を寄せるニノに首を横に振る。
「いや・・・ニノのせいじゃないよ・・・」
すべては俺の優柔不断が招いたこと。
智君にニノをとはつきあわないといっておきながら、一瞬とはいえ、ニノを智君の代わりにしようと思ったのは事実だから。
自業自得だ。
恋人になれなくても、せめてメンバーとして良好な関係を・・・という俺のささやかな願いはあっけなく潰えた。
いつものように松本と智君が肩を並べて帰るのを見送って・・・
・・・帰ろう。
ため息をついて、カバンを手によろよろとたちあがる。
「翔ちゃん」
ふいに声をかけられて、おもむろに振り返った俺の顔を見て、声の主・・・相葉君が訝しむように首を傾げる。
「どうしたの・・・?この世のすべての不幸を背負ったみたいな顔して・・・」
この世のすべての不幸を・・・?
俺は今いったいどんな顔をしてるんだ?
思わず自分の顔に手をやって苦笑する。
相葉君にまで不審に思われるって相当ひどい。
確かに気持ちはこの世のすべての不幸を背負ったくらいに重い。
「・・・別に何も」
苦笑いのまま軽く首を横に振って
重い足を一歩踏み出そうとしたその時
「ねえ、翔ちゃん」
ぽんっと肩に置かれた相葉君の手が俺を引き留める。
「もし時間あるなら飲みに行かない?」
「飲みに・・・?」
突然の誘いを訝しむ俺に
「うん、たまにはいいでしょ?」
相葉君はにっこりと他意のない笑顔を浮かべる。
何がどういいのかはわからないけど・・・
智君が来ることはもうないから、律儀に家に帰る必要はないし・・・
家に帰っても、どうせ酒を飲んで寝るだけだ。
それなら相葉君と飲みに行った方がまだましかもしれない。
そんなことを思いながら、相葉君のお誘いに頷いた。