はあ・・・
さっきから何回目のため息だろう。
智君には口をきいてもらえないどころか、目も合わせてもらえない。
そりゃそうだろう。
はっきりとニノとはつきあわないと言ったのに、あんなところを見られたんだから。
嘘をついたと思われても仕方ない。
俺のことを怒ってるに違いない。
よりによってあんなところをみられるなんて・・・
頭を抱えこみたくなるのをこらえて、またため息をつく。
好かれなくてもいいから、嫌われたくない。
健気を通り越して愚かだとは思うけれど、この期に及んでそんなことを思う。
でも、もうダメだ。
完全に嫌われた。
一瞬の気の迷いだったとはいえ・・・言い訳のしようもない。
もう、ため息しかでない。
「翔さん・・・なにかあった?」
松本が心配そうに声をかけてくる。
「・・・別に何もないよ」
それ以外答えようがない。
松本に話せるようなことは何もない。
「そう・・・?本当に何もない?顔色悪いみたいだけど・・・体調悪いとか・・・?」
心配そうに眉を寄せた、松本の整った顔をまじまじと見つめる。
本当に心配してくれているんだろう。
よく周りを見ていて、よく気がついて・・・そして優しい。
派手な見た目とは違って真面目で誠実。
智君が松本を選ぶのも納得できる。
「・・・大丈夫だよ」
言葉とは裏腹に声に力が入らない。
自分で思う以上にダメージを受けていることは否めない。
「無理しないでね・・・?」
「わかってる、ありがとう」
心配そうにしながらも、それ以上追及してこない松本に感謝する。
松本は何も悪くないし、恨む気持ちもない。
俺がどんなに望んでも手に入れられないものを、あっさりと手に入れた松本が、ただ羨ましいだけだ。