「・・・なんで?」
「・・・え?」
「なんでニノとつきあわないわけ?」
眉をぎゅっと寄せた智君の、まるで責めるような口調に途惑う。
・・・ちょっと待て。
俺がニノが付き合うのを阻止するために、わざわざ乗り込んできたんじゃないのか?
だったら俺がニノと付き合う気がないことを確認したんだからとりあえず目的は達成したはず。
それなのになぜこんなふうに責められないといけないんだ?
いつものことながら智君の理不尽な言動に振り回されてばかりだ。
そんな俺の途惑いなんて知る由もなく
「だって・・・・ニノかわいいでしょ?」
智君は不満げにぷっと頬を膨らませる。
「それなのになんで?」
強い口調で詰め寄る智君にのけぞりつつ・・・
ああ・・・なるほど・・・
かわいいのに、なぜつきあわないのか?ってことか・・・と、智君の不満の理由を漸く理解する。
自分がかわいいと思うものを俺がかわいいと思わないのが不満なのか・・・
それとも結果的に俺がニノを振るということになるのがお気に召さないのか・・・
どちらにしても、さっきまでニノと付き合ったりしたら許さない!という勢いだったのに、一転恨めしげに俺を睨む智君に・・・
ニノとつきあっても、つきあわなくても、結局は智君の怒りを買うことになるのか・・・と鬱々とした気持ちになる。
「なんで・・・って・・・かわいいと好きはちがうでしょ・・・?」
こらえきれないため息とともに声をなんとかしぼりだした。
「・・・そういうもの?」
智君はいまいち納得できないとでもいいたげに首を傾げる。
「そういうものだと思うけど・・・」
他の人がどうなのかはわからないけど・・・
少なくとも俺はそうだ。
かわいいだけじゃつきあう理由にはならない。
かわいいと好きは違う。
そして・・・残念ながらというべきか、俺が好きなのは今目の前にいる、何を考えているのかわからない、気まぐれな人だけだ。
ニノを好きになれたら・・・と思わなくはない。
でもこればかりは好きになろうと思ってなれるものでもない。
自分の心なのに、本当に思うようにならない。
どうしようもない。