どこで輝いていても。~風の声、光の声~

どこで輝いていても。~風の声、光の声~

心理学、脳科学、量子力学、哲学、
精神論、自己啓発を融合した
soul poems,essay


少し時間ある?そう言って貴方は、ドアを開けて入ってきた。

貴方の身体より大きくて重い椅子を静かに引いて、ちょこんと腰かけて。

元気そうだねと僕の顔を覗き込む。

私の事、もう、あんまり必要じゃなくなったみたいだねと試す様な視線の裏側に光るのは優しさ。

私が貴方の右肩に、いつも座っていたのは、
貴方にもできる、貴方もそうなれる!って信じさせてあげたかっただけ。

憧れている誰かみたいになりたいとか、ああなりたい、こうなりたいという声が、いつも聞こえていたから、私は貴方が、その気持ちを自分の追い風に変えて未知のエネルギーを使い始める事ができるように、今だよ!と耳元で囁いてきたけど。

僕は、少し前の自分を振り返りながら、ああ、そうだったね、だけど最近は、もう他の誰かや何かになろうとする事を止めたんだ。何か大きな事を成し遂げなくても僕は自分なりに、もう精一杯し尽くしてきたんだと、ある日突然認められたんだ、だから。
それは夢を持たなくなったとか、投げやりとか自分の人生を棄権したとか、そんなニュアンスじゃなくてね。
軽くなりたかったんだ、もっと。
肩書きや過去の成果で身を飾らないと堂々と人前に出られない様な臆病な自分を卒業したかったんだよね。
そしたら肩の荷が一気に降ろせて楽になった。君が僕の右肩から姿を消したのは、その時からなんだろうね。

貴方は納得したような顔をして席を立った。

僕に背を向けながら、でも、まだ引き留めてほしい余韻が、その小さな肩で揺れていた。

また来るわ。元気でね。ジレンマと約束があるから行くわ。

目の前に咄嗟に繰り広げられた貴方の呟きに、僕は暫く、呆気に取られながら、だけど本当に心が軽くなった自分に改めて安心していた。

話せて良かったよ。又、再会するだろうなあ。

僕が等身大の自分に満足できなくなった時に。

僕が今の自分には何かが足りないって歪んだ誤解に打ちのめされる時に。

でも、貴方は意地悪そうな顔をして実は優しさの塊だった。

自分自身にすら発見されないまま終わったかもしれない底力を発動させるために、側に居たなんて。

知らなかった。

ありがとう。

今日の、少し不思議なビジターは僕の応援者でしかなかった。

又、何処かで僕の知らない誰かを応援するであろう嫉妬という名前の彼女。

少しだけ頬を膨らませながら僕を優しく睨む目が可愛かった不思議なビジター。