習近平の毛沢東回帰は本当のようである | 日記「ウクライナ人の戦い」 Masanori Yamato

日記「ウクライナ人の戦い」 Masanori Yamato

「ウクライナ戦争」を描くことで、プーチンとは何者なのかを書きたい。

習近平の毛沢東回帰は本当のようである 2023/12/31  2:30

 

 

12/26 は毛沢東生誕130年の記念日であった。この日、習近平は李強首相以下6人の政治局常務委員全員を引き連れて毛沢東記念館を訪れた。

 

「毛沢東同志は偉大なるマルクス主義者、偉大なる無産階級革命家、戦略家、理論家であり、マルクス主義の中国化の偉大なる開拓者であり、中国社会主義現代化建設事業の偉大なる創始者であり、近代以来の中国の偉大なる愛国者で民族英雄であり、党の第1代の中央指導集団の核心であり、中国人民の運命と国家の姿を徹底的に変えた時代の偉人であり、世界のために抑圧された民族を解放し、人類進歩の事業に対し、重大な貢献をした偉大なる国際主義者だ」

「JB press」がは「新華社」の記事を引用して伝えている。

 

ところでこの26日の前日、12/25 に、「財新」がおもしろい社説を発表した。

「改革開放の成功は事実から真実を探求するかどうかにかかっている」という鄧小平の発言を引き合いに出して

「文化大革命中、国民経済は崩壊寸前だったが、当局者は依然として状況は素晴らしく、ますます良くなっていると主張していた」

「今、実際には人々の暮らしは衰退し、貧困と後進性が高まっている。先進諸国との差は広がるばかりである。近隣諸国や地域に大きく遅れをとっている」

「歴史が私たちに教える教訓は、私たちは歴史から何も学んでいないということです」と結んでいる。(以上は「財新」から)

 

この社説は、一旦はSNSでも拡散されたが、5時間後には全部が削除された。

 

習近平は太子党の紅2代である。父親の習仲薫は副総理まで勤めた高官であったが、小説『劉志丹』に関わったとして毛沢東に投獄されている。投獄理由は「小説を使って党と人民に反対した」というものである。習近平自身も文化大革命時代、13歳の時に「反動集団の子弟」と指定され、中央党校に拘束されている。(以上は「役情最前線」のYoutube動画から)

 

その後、紅2代であり太子党として各地の官職と地方党書記を経験しながら遂には国家主席に上り詰めた。

 

3期目の就任するにあたって、2022/10 、中国共産党大会は「習近平同志の党中央の核心としての地位を確立し」「新時代の中国の特色ある社会主義思想の指導的地位を確立する」と宣言した。

 

中国の経済は衰退しつつあるのではないかというのがもっぱらの観測である。投資格付け会社Moodys は12/5、中国国債をネガティブに引き下げた。

 

この1年、安定した雇用と成長を達成できなかった。外資の撤退が続いており、内部の困難を克服する具体策が見えないという理由を示している。

 

卸売物価指数は14ヶ月連続で下がっており、消費者物価指数もわずかづつ下がっている。このままではデフレ進行は避けられないというのが専門家の観測である。

 

中国社会科学院の創爆輝教授の発表したところでは、中国経済は「デフレと衰退」期に入っている。家計負債で見ると、日本はGDPの68%であるが、中国はGDPの2倍を超えている。その主なものは住宅ローンであり、これが消費を圧迫しており、卸売物価を下げている。このままでは負のスパイラルに入りかねないと懸念している。

 

特に不動産の売れ行きが北京、上海、深圳、広州等の1線都市でも落ち込んでおり、武漢、南京、青島、成都、西安等の2線都市では急激に落ち込んでいるという。

 

不動産市場の冷え込みは習近平の失策ではないと思う。不動産投資こそが鄧小平以来の中国の消費をけん引してきたのであるが、それが外資を呼び込み、さらに世界の工場として中国経済の隆盛を築いてきたのであるが、習近平が国家主席に就任した2012年頃にはすでに需給は供給過多に陥り始めていたのではないかと想像されるから。おそらく、習近平の失策と後年指摘されるのは「一帯一路政策」であり、「AIIBの設立」であり、「ゼロコロナ政策」であろうと思う。内政と外交両面に渡って中国は孤立しつつあるから。

 

習近平が「共同富裕論」を唱えたのは3期目に入る前だった。党中央も習近平も中国経済の衰退の兆候に気が付いていなかったはずがない。厳格な「ゼロコロナ政策」の解除(2022/12)こそは、3年という長期に渡って落ち込んできた消費の拡大を狙ったものであった。実態はその意に反して、不動産の下落と雇用の実態を明らかにする破目に陥っただけであったが。

あれから1年が経つが、経済の舵取りは国務院から党中央が掌握することになったが、そもそもが経済運営、財政運営というものは専門的知識を必要とするものである。それを政治局常務委員たち政治専門家たちが指導できる訳がない。

 

秦剛外相を疑い、李尚福国防相に不審を抱いて更迭したまま、その後任はいまだに指名できないでいる。二人とも習近平が任命した側近たちである。ロケット部の高官たちも大量に解任している。そして、李克強前総理の不審死である。

 

習近平は一人独裁体制を築こうと思考しているのであろうか。毛沢東回帰はその手段というのか。「共同富裕」という哲学で以って、「中国社会主義現代化建設事業」の推進者たらんと考えているのだろうか。

 

しかし、今のような官僚たちへの過度の不信と、それがために経済回復に効果的な政策を示すことができないなら、2024年の中国はさらなる動揺の一年となるような気がしてならない。