ラブコメ「まひろは紡ぐ」

 

ある地方都市の中学校の廊下で二人はすれ違いました。

道長君は、地元有力政治家の息子、まひろさんは地元国立大学教育学部教授の娘です。

ふたりは淡い初恋を経験しますが、休日に数回公園や遊園地に遊びに行ったくらいです。

ふたりとも上京して、道長君は将来の首相候補とも目される政治家になりました。

つい最近、財界の有力者で大金持ちの令嬢、倫子さんとも結婚し、娘さんが生まれたばかりです。

まひろさんは、新聞記者をなりわいとしながらも、小説を書いていて、某文学新人賞ももらいました。離婚して、娘を育てているまひろは小説家に専念することはできません。

道長君の活躍は知っていましたが、父親の影響で多少左がかっていたので、道長君のことは忘れていました。元夫は野党系の活動家でした。

若手政治家、藤原道長のインタビュー記事を企画した新聞社の政治部は、幼馴染のまひろに白羽の矢を当てます。

久しぶりに会ったふたりは、インタビュー後居酒屋に行き、まひろの状況を聞くと

「それなら、僕の広報担当をしないか。新聞社はやめても大丈夫なくらい給料ははずむよ」と言いました。

その後、まひろは政権党内の権力闘争、女性関係をリアルに迫る小説家(山崎豊子みたいな)になります。

 

遅ればせながら、年賀状です。俳句「龍よ!新玉(あらたま)の地球を捉えぬか

を付けました。絵と共に地球の再生を祈る句です。

 

 

リアル恋愛

これを恋愛と言ってよいのだろうか?事に至るまで、男君は女君の顔を見ることはできないのです。貴族と言っても、数百人!適齢期の男女となれば、さらに人数は限られます。有力貴族であれば、あそこのお宅には、令嬢がいると情報は伝わっているでしょうが、中級下級となるとそうはいきません。

女房の活躍が始まります。女房は広報担当として、「私のご主人様の女君はそれはそれは美しい方で、髪はつややかで長く、琴もお上手です」と宣伝します。それに引っかかった光源氏は、末摘花の屋敷に忍び込み、その風貌が女房の宣伝とのあまりの相違に愕然とします。女房は、琴が上手でない末摘花に、光源氏が通りがかる頃を狙って琴の冒頭部分だけを弾かせます。そして、男君から来た和歌には女房が代筆します。そして、おびきよせるのです。

 

藤壺は天皇の后、女三宮は権勢誇る光源氏の正妻。彼女たちは別に光源氏にも柏木にも恋焦がれていたわけではありません。藤壺は継子として光源氏をかわいがっていたので、油断もあったでしょう。女三宮は見ず知らずの男に犯されたも同然です。

今だったら、光源氏は何件何十件も刑事訴訟案件を抱えることになったでしょう。

なんで、こんなことが可能だったのか?そこには、召人と呼ばれる女房が存在していたからです。

召人(めしうど)とは、男君のお手付き、愛人となった女房のことです。こうした女性たちは、源氏物語でも愛人の数にも入っていません。ドラマ「光る君へ」でも、兼家が息子道兼に「帝の膳に薬を混ぜたことがばれないように(愛人の)女房を大切にしろ」といった意味のセリフがあります。

召人となった女房は、けっこう馴れ馴れしく男君と会話をします。男君は「ただ会って話すだけだから」と現代でも通じそうな言い訳を言って、愛人の女房に手引きを頼み込みます。召人は一応「ただ会って話すだけだから」という言葉を信じたふりをして、女君から人を遠ざけます。

自分が好きな男を自分の女主人へ手引きするなど、屈辱的で現代では考えられませんが、女房自身が「時たまでいいから、男君との関係を続けたい。そのためには、ここで断ったりはできない」と考えるのです。

こうした女房のせいで、藤壺、女三宮はじめ数々の女性たちが運命を狂わせられるのでした。