リノのコインは緊張する

あの頃はコインが見えてなかったからだ

5ゲーム目にコインがテンパった

回る中リールを注視する

まったく見えない

なぜ見えないのだろう



スーパーリノはもっと怖かった

ジャグのガコでもケツが浮いてしまう僕に対処する術はない

7ゲーム目なんてなければいいのに

ついに僕は耳栓を買った

無意味だった

鳴るたびに周りの客たちが苦笑する

僕が飛び上がらんばかりに驚くからだ

いい加減慣れろよ

そう思えば思うほど肩やケツが浮き上がる

さすがに恥ずかしい

僕は席を立った

隣の婆さんがいみじくも云った

「あんちゃん、まだストックあるで」




今日は中華そば

高い食材で美味いもんができるのは当たり前

そこらへんの食材で

お、美味いやん

これこそ、職人冥利

やっぱり、マスターはカッコいいのだ

僕は沸騰寸前の湯を注いだ

湯量も完璧だ

4分30秒で蓋を開ける

もちろん混ぜる時間を考慮したからだ

でも、僕は失敗した

麺が湯を吸ってしまいカップの基準線から湯ラインが低下してしまったのだ

ああ、僕はどうしたらよいのだろう

この基準線から低下した分、新たに湯をつけ足すことが正解なのだろうか

いや、もう30秒は経っているのだ

麺のかたさはいまが完璧

僕はカップの内側を凝視する

ああ、湯をいれるべき基準線が濡れ光っている

まるで天使の輪のように