【PR論】広報企画は社会的視点で
私の持論である「ソーシャル発想」。
社会と向き合い、社会的な視点からモノゴトを発想するのが「ソーシャル発想」です。
私と同じ考え方をもつ人は日本に2人。私をいれると3人しかいない。
■社会と対話する(1/2)
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いま、我々の「広報」というフィールドで「ソーシャルコミュケーション」という言葉を使っている人は、私の知る限り、広報が専門の千葉商科大学政策情報学部教授の藤江俊彦さん
(写真左)と、マーケティング本「社会と語る企業」の著者で電通総研の岡田芳郎さん
(写真右)の2人だろうと思います。 右はワタシ。
ネットで「ソーシャルコミュケーション」を検索すると、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の項目で多く散見されますが、ここでの意味は自分の人脈をネットで公開・紹介し合うサービス「SNS」でのコミュニケーションのとり方、あり方をさすものであって、「広報」のそれとはニュアンスが違います。
岡田芳郎さんはアドマンらしく、企業の売らんかな時代の広告戦略は高度成長とともに終わりを告げ、これからは企業が社会全体の中でどのような役割を果たしていくべきかという時代に入ってきたという視点から「ソーシャルコミュケーション」を説いています。具体的には今こそ社会問題と向き合うソーシャル・キャンペーンが必要なのだと・・・
一方、藤江俊彦さんは広報専門の学者らしく、広報の日本語訳をパブリック・ リレーションズというのは米国式PR法なのであって、日本社会はどちらというと皇室に象徴されるように英国に近いからソーシャルリレーションといった方がより正しいのではないか、という主張だ。
私もまったく同感ですね。米国はいくつもの民族が集合して出来上がった文字り合衆国だから、米国から伝来したパブリックリレーションのパブリックは世論であり市民といったイメージ。だから言葉の使い方としては正しい。
しかし、英国では世論ではなく、社会に該当するのだという。だから藤江さんは日本でいう広報はパブリック・リレーション=PRではなく、ソーシャルリレーション=SRなのだと。
実は私もさまざまなPR計画を立案する上で、いつも心がけているのが「社会的視点 Social viewpoint 」で考察するということであります。それは広報をメディアを中心とした「世論対策」ではなく、企業を取り巻くさまざまなステークホルダーに象徴されるように「社会との対話」にコミュニケーション対象を位置づけているからです。
「広報はアイディアだ」は私の持論ですが、アイディアの模索や立案している時でも「社会的視点」にたって構築するようにしています。私の広報パースンとしての姿勢であり、原点ともいえます。
ちなみにもう30年も前、某PR会社に1年間在籍していたのですが、そのとき書かされた企画書が「二部上場から一部上場に移行するための3ヵ年PR企画書-社会的責任という観点から-」(A4判20頁)というものでした。
今、社会的責任のことをCSRなどといっていますが、私たちは30年も前から「社会的視点」という切り口でモノをみてきました。「広報の王道」を歩ませてもらったと今でもその当時の社長に深く感謝しています。
私は本物の広報パースンかどうかを見分けるキーワードに「社会」をあげています。その人の会話に、企画書に、どの程度「社会」という言葉が出てくるか。社会とのかかりあいを説かずして広報などあり得ないのです。
なぜなら、「企業は社会の公器」であり、社会と共存していかなければならないからです。社会と会社という言葉は互いに反転すると対極的位置にあるように思えますが、現実は違い、「社会の認容なくして企業の存在なし」という思想から広報は始まります。
残念ながら、中小企業の経営者は目先の利益を追うのが精一杯で、「広報は利益を生まなければ意味がない」とするホリエモン的思想の持ち主が多いです。
プレスリリースはマスコミに対して発信する企業・団体の情報をあらわしたものですが、その情報に少しでも「社会との向き合い方」すなわち社会的視点が記載されておれば、私のいうソーシャルコミュニケーション意識と広報マインドが高いといえます。これは記事の可否とは関係なく、企業の根本的姿勢を表しているのでできるだけリリースには挿入するとよい。
いってえおきますが、いまどきのソーシャルとはちよっと意味合いが違います。いまどきのソーシャルはTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアをさす場合が多いですが、そんな小さな町内会的コミュニテイなど力はありません。やはりマスです。マスメディアを正面から堂々と動かす、それも社会面で。それが一流の広報パースンだと思っています。
■社会に対し、いい行動を起こす(2/2)
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企業の社会的貢献についていうと、バブル期には文化・芸術支援などの「メセナ」、あるいは医療・福祉・環境地域活動に協力する「フィランソロピー」など見栄えのする活動がブームになっていましたが、最近では、深刻化する社会問題などに光を当てる地道な支援活動、とりわけ外資系企業が「苦境に立つ女性」を支援するケースが目立っています。
化粧品会社エイボン・プロダクツ( http://www.avon.co.jp/
)が1992年から始めている「乳がんにさよなら」キャンペーンがそれ。各地で乳がんの早期発見・啓発に携わる個人や団体を支援するという内容。
「ピンクリボン」で有名で、募金活動の中心はピンクリボングッズの販売。 「ピンクリボングッズ」は、乳がんの早期発見の啓発運動を支援するための寄付付き商品だ。消費者が、ピンクリボンのマークの付いた商品を購入すると、製品1個につき定められた金額が、啓発運動のための寄付金として充てられるという仕組みだ。
これ、コーズ・リレーテッド・マーケティング(cause related marketing)、 略称「CRM」と呼ばれる。
商品の利益の一部を指定の社会的活動に提供するというコミュニケーション手法で、製品の利益構造に当初から社会還元が考慮されている点で、かつてのバブル期にみられた余剰資金によるメセナやフィランソロピー活動とは根本的に発想が異なっている。
もっとも「CRM」をIT的にいうと【Customer Relationship Management】となり、顧客データベースを元に、商品の売買から保守サービス、問い合わせやクレームへの対応など、個々の顧客とのすべてのやり取りを一貫して管理しながら顧客と長期的な関係を築く手法のこと。こちらもCRMと呼ばれる。
消費者志向の製品をどのようしにして作りどのように売るかという「プロダクトマーケティング」に対する「ソーシャル・マーケティング」は販売した商品を社会にどのように活かすかという出口として位置づけられます。
アメックス──カード業界はその利用の多くを旅行というシチュエーションに
負っているが、その基盤である世界各地の観光地で、名所旧跡の保存及び復元活動を積極的に支援している。「自由の女神修復プロジェクト」はあまりにも有名。
ベネトン───世界各地から集めた学生に対して奨学金と生活費を支給する
という、大胆なシステムによるアートスクール「ファブリカ」を1994年に開校している。
コカコーラ──至極最近のケースでいうと、米国メジャーリーグの野茂投手の
奪三振1個につき100ドルを小児AIDS基金に寄付。
パタゴニア──アウトドア関連の衣料・用具ブランドであるパタゴニアは、自ら
の商品が活躍するフィールドの積極的な保存に努め、売り上げに対するパーセンテージによって、その援助額を決定。
これら4つの企業コミュニケーション手法はいずれも、何らかの社会性の高い活動への関与とその実態を告知し、企業の社会的存在意義を訴求するとともにグッドウィルとロイヤリティの形成を狙ったものだ。
上記はいずれも大企業のケースですが、中小企業にはCSR(企業の社会的責任)はできないのか──。
久米繊維工業( http://www.t-galaxy.com/
)の久米信行社長は、コストが高くなるオーガニックコットンTシャツをネット販売やいろいろなNPOやアーチストとの協働によって販売しています。環境問題への積極的参加。このことが少しは同社CSRに貢献しているのでは久米さんは語っています。
中小企業といえばこんな事例も。行政や社会正義への積極的協力である。マンション向け防犯対策用品の販売を手がけるナック(大阪市、中野幹彦社長)という会社 は警視庁の許可を得て「指名手配」というサイトを作ろうとしている。
事件詳細と指名手配情報を表示する地図サービス「指名手配マップ/全国版」 を平成19年2月公開をメドに開発するというもの。RSS配信システムとGoogle MapsAPIを使用するという。サイト名「マンション防犯.com」も勇ましい。
▽指名手配 http://www.npa.go.jp/wanted/2/jyuyo1.html
一民間企業が警視庁の犯人逮捕活動に積極協力という社会正義がCSRにもなり、ひいては本業の防犯用品ビジネスの広報にもつながると考えたのであろう。私はこういうアイディアが広報活動に必要な「社会的視点」だと評価したい。
しかしながら、一般生活者は社会貢献活動を行う企業を評価しつつも、直接的な商品購入までは結びついていないというアンケートデータもあります。
▽2004年7月アンケート「企業の社会貢献活動に対する一般生活者の視点」
http://z.la/yd81a