【発想】企業情報を「社会情報化」すればいい
PR広報したい時、誰でも自分が、俺が、私がと我田引水なプレスリリースになりやすい。世間や社会のことを考えていないのだ。マスコミは企業の宣伝のために存在しているのではなく、その社会的意義にニュース価値がないと無残にもボツにしまう。
私のプレスリリースにおけるやり方。
企業側に立たず、商品サービス側に寄らず、どこまでいっても世間・社会からの視点から素材を組み立てエッジの効いた文案にしあげていく。
リリース発信したい企業情報を社会除法に変換してあげればニュース情報になるのだ。
■媒体や紙面ごとに切り口変える(2/2)
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企業情報を「社会情報化」するにはいくつかの方法がありますが、そのひとつに「切り口」を変えるというのがあります。ちよっと書き方を変えるだけでリリースが生まれ変わります。
発信する企業側からみれば企業情報、商品情報は知らせたい大切な情報なのかもしれませんが、情報提供を受けるマスコミからすれば報道したい情報のほんの一部。
そもそもマスコミは企業や商品のPR記事を報じるために存在しているのではなく、社会人として、生活人として、人間として知らせたい情報、役立つ情報に使命感をもって報道にあたっているわけです。
例えば新聞。企業情報、商品情報というのは生活面などで記事になることもありますが、多くは経済面という紙面で紹介されます。企業の経済活動のひとつとしての「新技術」「新商品」を紹介しているのがそれです。
企業側の当該商品が家庭用品ならば経済面よりも生活面で取上げて欲しいところですね。ならば経済面を担当する経済部記者にリリースを届けても記事になるはずもなく、まったく意味がありません。
わかりやすく説明してみましょう。たとえば、W社が開発した電子レンジで食べる冷凍食品の湯豆腐のリリースをしたいというケース。(こういう商品が現実にできるかどうかは不明で、架空の話です)
▼新製品として載せたいなら⇒新聞の経済面にリリース提供
「W社、温泉水で作った冷凍「湯豆腐」を開発、60秒チンでとろーり味」
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上記タイトルになるようなリリース文章を作成すればいいことになります。温泉成分入りの湯豆腐がおいしいのは知られているが、現地でしか入手できなかった難点を解決、冷凍化することで潜在ニーズを発掘、消費拡大が狙い。ここで大事なのは腐りやすい豆腐の冷凍化をどういう技術で成功したかという点は新技術という観点から不可欠。もちろん「なぜ温泉豆腐を冷凍にしてまで食べたいかのか」の社会背景も。初年度目標の数量と金額を明示。
▼食生活の提案をしたいなら⇒新聞の生活面にリリース提供
「夏こそ湯豆腐、冷凍品登場で鍋気分、温度封じ込めで栄養価アップ
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生活面記者へは発売リリースと同じものを提供してはダメ。湯豆腐の全般の正 しい食べ方という切り口、入り口が王道。しかも暑い夏になぜ「湯豆腐」を食べるのか、本当においしいのか、これまで冬の鍋物としてしか食べなかった湯豆腐の食べ方を変え得る新しいライフスタイルになる、ということが書かれていなければならない。
ひと手間加える湯豆腐の変り種レシピはもちろんのこと、湯豆腐大好き有名人のコメントも用意しておきます。
▼おいしさの秘密を歌いなら⇒新聞の科学面にリリース提供
「なぜおいしい温泉湯豆腐? 温泉成分と豆腐の深~い関係
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水道水と温泉水の2つで作った場合の湯豆腐の違いを、おいしさの観点から科学的に分析した数値や専門家のコメントが必要。温泉湯豆腐を料理自慢として出している旅館女将の話も挿入する。ここでは情報を医療・健康、料理の観点から捕らえなおし、信頼すべきオピニオンリーダーの談話を引用して提供。
▼開発者の裏話をさせたいなら⇒新聞の社会面にリリース提供
「温泉湯豆腐の冷凍化に成功した○○さん 旅館での食体験600回も
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ここでは開発にあたった人の苦労話や開発のヒントになったことなど、どちらかというと、商品情報や技術情報というよりも「人間ドキュメント」にスポットをあてるリリース原稿を作成します。
開発者として本商品誕生の暁には日本人にどういう食生活をして欲しいのか、あるいはどういう社会になればいいのかなど、社会との接点・参画への思いを不可欠情報として記載しきます。
ひとつの商品を媒体の紙面ごとにふさわしいように4通りに書き分けるわることになります。以上、「社会情報化」にするための手法「切り口編」でした。
「切り口」を変えただけで「社会情報化」とはオーバーな言い方といわれそうなのでもうひとつ。
こちらは文字通り、今日的社会や世相を反映した商品開発で有名な女性用下着メーカー「トリンプ」のリリースを紹介しておきます。
すなわち切り口を変えるのではなく、商品自体に「社会情報性」が備わっており、むしろ「社会問題」が先にあって、自社の商品・技術ならどういう解決方法をするかといった、社会問題対応型商品なのです。
これぞまさしく私のいう企業情報・商品情報を「社会情報化」した実例です。しかし、マスコミには報道されても本当は売れないのではないか、本当に実用に耐えうるのかという危惧・懸念がありますが、私もその通りだと思います。
メーカーに聞いてはいませんが、あくまで話題性先行のための商品、一流メディアでの露出占有率をあげるといったところが目的なのでしょう。流通段階における販売店も「マスコミで話題になることで販売員と顧客との会話をスムーズにし、購買の動機づけになれば・・・」と思っているに違いありません。
[トリンプのリリース例1]-----トリンプ 少子化対策ブラ(2006/05/09)
http://www.triumphjapan.com/release/unique/2006050900148.html
ブラジャーの右カップ表面に金色でプリントされた日本列島の上に「4人の笑顔の子供が、1人の笑顔のおばあちゃんを支えている」様子をそれぞれ刺繍にして貼り付けた。左カップ表面は、日本列島が黒くプリントされ、「つらい顔をした子供2人が、苦しそうに1人のおばあちゃんを支え、またおばあちゃんも不安げな顔をしている」様子の刺繍になっている。
[トリンプのリリース例2]-----裁判員制度ブラ(2008/11/05)
http://www.triumphjapan.com/release/unique/20081105.html
「正義の女神」からインスピレーションを得た、天秤としても使用することができるブラジャー。カップ部分は天秤のお皿として、ストラップと背中の部分のチェーンは天秤の支鎖として使用、カラーもゴールドで統一して本物の天秤のようなイメージに仕上げた。
セットで製作したボトムの巻きスカートは、裁判官が法廷で着用する法服と同じ素材(シルクの羽二重(はぶたえ))を使用、ウエスト部分のリボンは女性裁判官が法廷で着けるスカーフをイメージ。この巻きスカートはマントとしても使用可能。肩から羽織ってリボンを結ぶと、まるで裁判官のようなイメージに仕上がげた。ショーツのおしり部分には「平等」の文字が書かれており、裁判員としての心構えを訴えている。
おわかりいただけましたでしょうか。上記商品を購入して着用したいという人は皆無だと思われます。それなのに同社は遊び精神よろしく一貫してこういう世相を反映した商品作り、リリースも当然のごとく「社会情報化」した内容満載だ。同社はこの他にも数々のユニークなブラジャーを発表しています。
▽http://www.triumphjapan.com/release/unique/
(リリースの履歴)
このように一見アパレルとは何の関係もないと思われている社会問題に企業は応すべきと考えています。そういう姿勢こそが「社会への参画」なのです。
トリンプと同じ目線、同じ視点で「発想」すべき。おそらく普通なら営業の第一線から新製品のテスト品が出来上がってきた段階から「広報」は動くと思いますが、トリンプの場合はまったく逆で、すべては「広報ありき」なのではないかと私は思っています。
「こんなものは作れないか」。広報から出された「アイデイア」がまず先にあって、それを商品化するために各部が集まる、そこで作業分担やスケジュールが決まる、という段取り。広報が決めたアイディア企画だから、マスコミに掲載されるないはずはない。
私はこのトリンプのようにすべての会社が「広報発」の作戦指令が出て、「社会情報化」する共有システムができればいいな思っています。