【本】貧乏人には貧格がある
古本好きのフリーライター、岡崎武志さんが書いた「あなたより貧乏な人」(メディアファクトリー刊)。
どんな内容なのかについて要約を知りたい人は、読書専門メルマガの管理人モモちゃんの紹介記事をご覧くださいませ。
実は私は日ごろから「本物の人はつねに貧乏である」という信念を持っています。またこの世で最高の仕事は「芸術」だとも思っています。やりたいことだけをやっているからです。ほとんどの場合、妻子や友人からも見放されます。それぐらい「一途」なのです。社会生活すらできないのですから反社会的な人なのかもしれません。
私の考えるホンモノの人像
⇒ http://ameblo.jp/pridea/entry-11030933530.html
ブログを含むネットで「よく月商○○万円への道」「億万長者になる法」「こうすれば儲かる」たぐいの文言をよく目にしますね。ああいうの大嫌い。ほとんど詐欺・騙しの世界と思っています。だから私は「お金の匂いのついた人」とはつきあいたくない。お金が嫌いなわけではありません。お金よりももっと大事なことがあるじゃないか、そういう一点で接していきたい。
たとえば、芸術。いまどき芸術という職業では100%メシが食えない。この分野で飯を食っている人は「あやしい人」とみた方が正解かもしれない。二科展などに象徴されるコンクールものはクソ食らえといって出展すらしない天邪鬼の人がいい。
本物はほとんどといっていいほどこの種の(世間では権威があるとされる)イベントには参加しない。それは審査員が誰になっているのか、どんな傾向が時代を支配しているかを見抜いているからです。つまり審査員のお眼鏡にかなっていなければ入賞などしない。逆に入賞したい人はその審査員の門下生にならなければならない。こういう図式はどこの世界でも変わらない。そんな入賞にどれほどの価値があるか。
存命中は社会的評価をうけないのでほとんどが「没後」になってしまいます。当人たちはそれでもいい、いやそんなことはどうでもいいと思って、芸術=真理を究めていく人たちです。狂気の世界。でも、私はそういう人間くさい人が好き。
結果として、食うこともできないから「貧乏人」になっていきます。
貧乏なんか恥ずかしいことではないぞ、がんばれ、誰かがあなたの活動、生き方をみているぞ、ここに1人だけどあなたの応援団がいるじゃないか・・・とね。
この本を書いた「純貧の思想」の持ち主、岡崎武志さんにお逢いしたくなった。逢ってくれるかな。お写真はお借りしました。
貧乏人には貧格がある、なるほど、気に入ったこの言葉。岡崎さん、これ、名言。
[本の内容]
ホームレス俳優、借金バクチ打ち作家、税金ビンボー、売血生活、四畳半パラダイス、貧乏レシピetc.貧乏でも楽しく暮らす知恵。
[目次]
序 章 ビンボー原論
第1章 腐裕より貧格の人びと—楽しく強く清らかに
第2章 愉快痛快!有名人のマル貧話
第3章 男もすなる貧乏を女もしてみんとて
第4章 マル貧生活を生き抜く庶民の知恵—食と住処
第5章 これだけ押さえればOK!古今東西借金術
第6章 貧乏をバネに遙かに高く
終 章 純貧の思想—あとがきにかえて
[著者プロフィール]
岡崎 武志(オカザキ タケシ)
1957年大阪生れ。立命館大学を卒業後、高校の国語講師を7年勤める。1990年春に単身、東京へ移住。以後、雑誌編集者を経てフリー・ライターに。古本好きの仲間とつくる書物雑誌「sumus」同人
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以下の書評は、メルマガ「これであなたも読書通!話題の本」
の管理人、活字中毒のモモちゃんが2010/10/26に配信してきたもの。彼女の許可を得ましたので全文をご紹介いたします。
[ここから・・・] 役者、作家、貧乏だった人のエピソードを集めたもの。
一番最初に出てくる天本英世さんの話が強烈だった。仮面ライダーで死神博士を演じた役者さんだ。
晩年テレビで人気者になるまで、彼は知り合いのクリーニング屋で居候をしていた。営業が終わった夜の時間だけ、二階の部屋を借りていたというのだ。昼間はホームレスである。
しかしその天本氏には、実は持ち家があったのだそうだ。
かつて彼には結婚を考えた女性がいた。十一歳年上の、それは美しい未亡人であった。結婚までこぎつけたとき、天本氏の父が二人のために家を用意してくれたのだ。
だが女性は去ってしまった。天本氏は「家は結婚した人のための必需品。だから、結婚をしない男には必要がないものだ。家族がいてこその家」と語っている。「家も物も持たないことで、かえって度胸がすわった」とも言っていたそうだが、その心中はいかばかりだったのだろう。
超売れっ子の芸人さんにも苦労の日々はあった。あの明石家さんまさんも、大変な貧乏をしたことがあるのだという。
弟子入りをしたものの、女性問題で辞めてしまい、彼は一度東京に出た。金がなくて借りた部屋は、新小岩の四畳半、八千円の部屋である。
家具も夜具もそろっていなくて、タオルケットを巻いて押入れで寝た。パチンコの稼ぎで食いつなごうとしたものの、うまくはいかず景品の角砂糖で糊口をしのぐ羽目となった。「まるでクマや。曲芸のクマと同じや。うろうろして角砂糖…!」
貧乏は男性ばかりではない。女性の芸能人にもいた。吉永小百合さんも、貧しい家の出身でご苦労をされていたようだ。
吉永さんのお父様は、もともとは広い土地を持つお金持ちであったのだそうだ。しかし事業に失敗し、税務署により差し押さえを食らった。
彼女が芸能界に入ったのは、傾いた家計を助けるためである。空の米びつを前に暗い目をした家族を、支えるためであったのだと書かれている。
中学ではほとんど授業に顔を出せなかった。そのため、同級生からのいじめにあい、友達もろくにできなかった。
普通の暮らしがしたいと高校にも進んだが、この頃になると親が仕事を抜けることを許してくれなくなっていた。学費を稼げと言うのである。
期末テストを終えたその足で、撮影に向かったことがあった。たった一人夜行列車に乗って、金沢まで行ったのだ。財布を盗まれ、三千円を失ったことに動転した。女優として、大金を稼ぐ身であったというのに…。
貧乏話を集め、まとめた本ということだけど、ややとっ散らかった印象があった。
まず、時代がバラバラ。昭和の話があれば、平成の話もあり、中には大正の話もある。一口に貧乏と言っても、時代によってその「味」の違いはあるはずなんだ。
また、著者の考えによると「金のあることが幸福ではない、貧乏は怖くない」ということであるようなんだけど、その割りに笑えるエピソードがそう多くないように思える。私にはね。
第二弾のために、より面白いエピソードを手元に置いているそうなのだが、できれば第一弾から思い切りはじけてほしかった。残念。[・・・ここまで]
